第53回全日本実業団ハーフマラソン(山口ハーフ)が2月9日、山口市の維新百年記念公園陸上競技場を発着点とする21.0975kmのコースで、2025海外ハーフマラソン派遣選考競技会を兼ねて行われる。男子は2日に59分27秒と日本記録が大幅に更新されたが、東京オリンピック™10000m代表だった伊藤達彦(26、Honda)が「日本記録更新を狙う」と明言。日本記録を出すためのペース設定やレース展開も、明確にイメージしている。伊藤の成長過程なども交えて、発言の背景を紹介する。
日本記録を出すためのペース設定は?
59分27秒が出た翌日だった。伊藤達彦は山口での目標を、よどみなく言い切った。「先に日本記録を出されてしまいましたが、目標は変わらず日本記録の更新です。今、結構調子が良いので、コンディションとレース展開次第では狙えると思います」
以前の日本記録は1時間00分00秒、20年の丸亀で小椋裕介(31、ヤクルト)がマークした。それを太田智樹(27、トヨタ自動車)が丸亀国際ハーフマラソンで、59分27秒と33秒も更新した。目指す記録が一気に上がれば、普通の選手であればその目標を口にすることに二の足を踏むだろう。そこを伊藤は躊躇わずに話した。
太田へのライバル意識もあったようだ。「1月の徳之島合宿で一緒になったとき、太田君は記録は狙わない、と言っていました。ウソをつかれたので、全日本(実業団ハーフマラソン)でお返しをします」おそらく太田も、そのときは自信がなかった。ニューイヤー駅伝は3区(15.3km)で区間3位。区間賞とは10秒差と悪い走りではなかったが、最長区間の2区(21.9km)で区間賞を取った前年に比べれば、元日の走りは本調子ではなかった。パリ五輪前から故障があり、本格的な練習を始めるまでブランクもあった。
伊藤と太田は同学年で、同じ静岡県浜松市の高校出身である。Hondaとトヨタ自動車は同じ業種で、ニューイヤー駅伝でも毎年優勝を争っているチーム。本人同士がどう思っていようが、周囲からはライバルと見られる。箱根駅伝と10000mで名勝負を繰り広げた相澤晃(27、旭化成)に対しても同様だが、伊藤は「彼は彼、自分は自分です」などと言って取り繕ったりしない。太田に対するユーモアを込めた話しぶりにも、ギスギスした関係でないことが表れている。
丸亀では2位の篠原倖太朗(22、駒大4年)も59分30秒と、従来の日本記録を30秒も上回った。記録が出る大会であるのは間違いないが、風の影響が強い大会でもある。しかし全日本実業団ハーフマラソンでも、1時間0分台の記録は多数出ている。男子の大会記録は1時間00分19秒(21年、市田孝=旭化成)で、以前の日本記録と大きな差はなかった。市田の5km毎の通過タイムは以下の通り。
5km14分22秒
10km28分30秒(14分08秒)
15km42分54秒(14分24秒)
20km57分11秒(14分17秒)
フィニッシュ1時間00分19秒(3分08秒)
伊藤も市田の記録を参考に走るという。「山口のコースは序盤が上りで、そこをロスなく行けるかどうかがカギになります。序盤を大会新のペースでは行きたいですね。最初の5kmを14分20秒くらいで入って、その後の5km毎を全部13分台で押せば記録(59分27秒)が出ます」伊藤が想定しているペースは以下のようになる。
14分20秒
28分20秒(14分00秒)
42分20秒(14分00秒)
56分20秒(14分00秒)
59分25秒(3分05秒)
もちろん多少の凹凸は生じるが、このタイムをテレビ観戦の参考資料とできるだろう。
  
















