「アメリカよりも心が広い国」自負するタイ 同性婚を後押したのは

この日のイベントに登壇したタイのセター前首相は、アメリカのトランプ大統領が「『生物学的な男女』のみを性別として認める」とする大統領令に署名し、多様性を否定したことを批判した。

セター前首相「最近就任した、ある大国の指導者が、自国には性別が2つしかないと明言しました。私は衝撃を受けました。私たちは、彼らよりも心が広い国だと信じています」

タイは、近年"LGBTツーリズム"を掲げ、観光客の受け入れを進めたほか、同性愛をテーマにしたドラマを世界に発信するなど、多様な社会のあり方をアピールしてきた。

また、性別適合手術などの医療技術が進んだことも「ジェンダーに寛容な国」というイメージを定着させた理由のひとつ。美容整形が専門のバンコクのガモン病院には、国の内外から多い時で月に約100人が性別適合手術を受けに訪れる。

ガモン病院の創設者 シリペン・パンシートゥムさん
「最近では、心と性が一致しないトランスジェンダーに限らず、性別を当てはめないノンバイナリーなど、様々なグループを受け入れています」

国営企業も同性パートナーを「福利厚生の対象」に

銀行のカード業務を行うタイの国営企業「KTC」は3年前、同性のパートナーがいる従業員にも男女の夫婦と同じように、住宅ローンの補助や結婚支援金を提供する福利厚生制度を導入した。

KTC ピヤスダー・クェンノンシー人事部長
「LGBTQ+という従業員のアイデンティティをありのままに受け入れ、オープンな会社であるべきだと考えています」

ただ、そんなタイでも性的マイノリティへの差別や偏見は残っている。

瓜生さんと結婚したワリン・クァンピグンさん(43)は、バイセクシャルで、男性、女性の両方が恋愛の対象になる。過去にいじめられた経験がある、と話した。

ワリン・クァンピグンさん「私も(同性愛が)異常なことだとみなされ、いじめられたこともあります。やっと法律ができて、充実した生活ができるようになるので嬉しいです」

タイでは同性婚が認められるまでに、国会で最初に法案が提出され議論が始まってから10年以上かかっている。動きが加速したのは2年前だ。