タイで「結婚平等法」が施行された1月23日。タイ人女性と結婚した日本人女性がいる。瓜生安希さん(42)、元警察官だ。8年前タイに移住した時には「まさか、”ふうふ”になれるとは思っていなかった」。

性に寛容だといわれるタイでも、同性婚の法制化には、国会で議論が始まってから10年以上かかっている。動きが加速したのは2年前だ。何が、同性婚の実現を後押ししたのか。

「好きな人は女性」20歳のころ母に打ち明けた

福岡県直方市で生まれ埼玉県内で育った瓜生安希さん(42)。小学校を卒業するころ、自身の性について「周りとは違う」という違和感を持ち始めた。

幼少期の瓜生さん

瓜生安希さん「性自認は女性。好きになるのも女性。あとは、いわゆる女性的な格好とかよりは、中性的な、いわゆる男性的な格好のほうが好き。」

20歳を迎えるころ、初めて女性が好きであることを、母親に打ち明けた。

きっかけは大失恋だ。当時精神的に参っていた瓜生さんは、誰かに泣きつきたかったが、友人には女性が恋愛の対象であることを打ち明けていない。泣きつけるのは、母親しかいなかった。

失恋したこと。相手は女性であること。今、とても辛いこと。自宅で胸の内を吐き出した。

娘の話を聞いた母は、「大丈夫?」と精神状態を心から心配してくれた。

瓜生安希さん「母親に話をしても、別に否定されませんでした。母は、ただただ、私を心配してくれました。それを見て、ああ、母の中では娘の恋愛対象が女性であることは重要な問題じゃないんだ、と分かって安心したんです。一番近い存在の人たちに否定される人もいると思いますけど、私はそういうことはなかったのでラッキーでした」

ただ、家族や親しい友人以外に自分のことを話す勇気はなかったと話す。

瓜生安希さん「言ったら仕事にも影響あるでしょうし、そんなの怖くて言う気もしなかった。隠していましたよね」

警察官だったころ訪れたタイで現在のパートナーと出会った

瓜生さんは警察官として働いていた。2014年に訪れたタイで、パートナーのワリンさん(43)と出会った。瓜生さんの父親がタイで経営していた企業にワリンさんが勤めていたのが出会いのきっかけだった。

3年ほどタイと日本で遠距離恋愛を続けていたが、8年前、瓜生さんがタイに移住し一緒に暮らし始め、そして去年7月、タイに家族や親しい友人たちを招いて結婚式を挙げた。いわゆる事実婚だ。