「北朝鮮側にトラックが100台以上」中朝貿易の約7割担う丹東 2024年の貿易取引は停滞
丹東には中国と北朝鮮を結ぶ橋がある。1943年に完成したもので「中朝友誼橋」と呼ばれている。道路が1車線と単線の線路が備わっている。取材班が丹東に滞在している間、多くのトラックが橋を渡って北朝鮮側に向かっている様子が確認できた。また、早朝には貨物列車が北朝鮮側に向かっていく様子も確認された。中朝貿易の関係者によると、ここ最近はトラックなどの往来が活発だという。

中朝貿易の関係者
「ここ最近は1日に100台近くのトラックが北朝鮮側に向かうこともある。日用品や食料品のほか北朝鮮側の住宅建設で使う資材も運んでいるようだ」
丹東は中朝貿易の7割を担うとされていて“貿易都市”の側面も持っているのだ。しかし、新型コロナが猛威を振るいはじめた2020年1月に北朝鮮は国境を閉鎖。現在はトラックや貨物列車は行き来できるようになったものの人の往来は厳しく制限されているという。
丹東の旅行会社の担当者
「北朝鮮に入国するツアーは今は扱っていない。私たちも再開の知らせを待っているところだ。今年3月に再開すると言っている人もいるがよく分からない」
丹東には北朝鮮との貿易会社や北朝鮮ツアーを売りにした旅行会社が数多くあるが、コロナ禍で潰れた企業も多いという。こうした店が集まるエリアに取材班も行ってみたが、ほとんどの店がシャッターを閉めていて人通りもまばらだった。
中国の税関当局によると、中国と北朝鮮の去年の貿易総額は約21億8039万ドル(日本円で約3400億円)で、2023年より5%減少したという。貿易取引の停滞が明らかになった形だ。
ロシアに急接近の北朝鮮 “後ろ盾”中国とは外交関係樹立75周年迎えるもすきま風?
去年、中国と北朝鮮は外交関係樹立75周年を迎えた。4月には中国共産党の序列3位で全国人民代表大会トップの趙楽際委員長が北朝鮮を訪問。「中朝友好の年」の開会式に出席した。しかしその後、注目されていた首脳会談は行われず、年末に行われる可能性が指摘されていた「友好の年」閉会式も行われなかった。12月30日、中国外務省の定例記者会見で1年間の中朝関係について総括するよう求められた毛寧報道官は「両国指導者の合意に従って中朝関係を維持し強固なものにしたい」などと述べるにとどめ、具体的な評価を避けた。
一方、北朝鮮はロシアに急接近した。去年6月にはロシアのプーチン大統領が24年ぶりに北朝鮮に訪問し金正恩総書記と会談。有事の際の軍事支援について明記した「包括的戦略パートナーシップ条約」を締結した。さらに、北朝鮮は兵士をロシアに派遣。ウクライナ軍が越境攻撃を行っているロシア西部クルスク州に北朝鮮兵が投入されていると各国が指摘していて、韓国の情報機関「国家情報院」は、これまでに約300人が死亡し、約2700人が負傷したとする分析を明らかにしている。
去年1年間、北朝鮮はロシアとの軍事協力を強化した一方で、これまで“後ろ盾”として存在感を発揮してきた中国との関係強化の動きはほとんどみられなかった。中国と北朝鮮の間には微妙なすきま風が吹いている。