「楽しい思い出や景色を作品に重ねていきたい」

コンクールでの入賞を目指し書道に打ち込む日々。お手本通り、きれいに書くことを求められました。そんな中、地元・倉敷の美術館である作品に出会ったことで書への向き合い方に変化が生まれたといいます。

(中塚翠涛さん)
「幼いながらにミロとかクレーの作品に触れたときに、『楽しい絵を描く方だな』って。とにかく心が踊る。訴えかけるものというよりは、優しくて絵を見ていたら癒されるような。心の豊かさとか。いろんな作品を見れば見るほどよりその魅力に気付いた。だから自分もどういう作品を作りたいかなと思うと、どうしても自分の楽しい思い出とか景色を重ねていきたいなと思う」

絵画に見た「心踊る情景」を、書の世界で自由に表現したい。中塚さんは大学卒業後、海外に挑戦の場を広げ、自身のスタイルに磨きをかけてきました。去年、東京・銀座で開いた個展でも形や色に捉われない書の新たな可能性を模索したといいます。

(中塚翠涛さん)
「『こうじゃなきゃいけない』という自分の鎧を外す。自由に表現するようになってからのほうが、基礎の大切さや立ち返る場所があることへの喜び、本当に必要なことが見えてくるようになった気がします」

「凪が…、飛行機雲みたいに流れて。『止』の部分が街並みみたいな雰囲気ですかね」

日々、筆をとり続ける、中塚さん。今、大切にしていることは…

(中塚翠涛さん)
「孔子の言葉で『知識よりも好む者、好む者より楽しむ者』という言葉が大好きなんですけど、『楽しんでいる人には敵わない』というのは、自分にぴったりな言葉だなと思って。あなたらしい表現を待ち望んでいるという風に言っていただけるので、それを求めてくださる方がいる限りは、自分はこのスイルでいきたいなと」