ビデオテープ問題は「博物館」にも影響

ところ変わって『四日市市立博物館』(三重県)。
昔の街並みや、人々の生活の移り変わりなど、四日市市の歴史についての展示が行われています。

朝7時30分。開館時間の2時間も前に出勤してきたのは、学芸員の森拓也さん(71)です。向かった先は、地下1階にある小さな部屋。何をしているのかというと…

『四日市市立博物館』学芸員 森さん:
「ビデオテープをDVDにする作業。朝一でDVD化の用意・セットをしてから本来の仕事に入る」

なんと6年前から、貴重な映像を守るため、仕事の合間を縫ってデジタル化を一人で担当。ビデオデッキはすでに生産が終了し修理用のパーツもないため、独学で修理をしながらの作業です。

森さん:
「多分500本はあるかな。数えたことないし、数える気もない(笑)。『まだこんだけあるのかって』イヤでしょ。いつになったら終わるんやろうって」

昔の映像を残すのは「博物館の使命」

時には、「ウソ!引っかかった、ヤバい」と古いテープと格闘しつつ、これまでに200本以上をデジタル化してきた森さん。貴重なテープは数多くあるといいます。

例えば、1934年(昭和9年)に撮影された「四日市祭」の映像。
名物の「邌物(ねりもの)」と呼ばれる巨大なからくり人形の山車が町を練り歩く様子が記録されていますが、その山車のほとんどは戦時中の空襲で焼失しました。

森さん:
「もちろん焼失したものが映っているのも大事だけど、動き、『こういうふうにからくり人形が動いていたんだ』と分かることが重要」

さらに、1959年(昭和34年)の「伊勢湾台風」を“一般の人が8ミリ映写機で記録”した映像も。

高潮による被害で5000人以上の死者・行方不明者を出した台風の被災直後の四日市。大量の水が流れ込み木船で避難する人や、泥をかきだす人、かさ上げのためにドラム缶に土を詰める様子などが収められた貴重な映像資料です。

森さん:
古い出来事があって、今があって、未来があるわけでしょ。今しか知らないのに未来が語れるかって話よ。これはね、本当に博物館の使命なの」

“クビになるまではデータ化を続ける”と笑う森さん。四日市市立博物館は工事のため2月28日まで休館中ですが、今後、森さんが“救出した”貴重な映像を見ることができるかもしれません。

(THE TIME,2025年1月14日放送より)