企業間取引に政治の影…実利あるも反対?

ところが、大統領選に向けた動きが本格化した2023年12月、全米鉄鋼労働組合が買収反対を表明。
2024年1月にはトランプ氏が反対を表明し、さらに後を追うように3月、バイデン大統領も否定的な姿勢を示したのです。12月には、外国企業の投資を審査する機関「CFIUS」は判断を下さず、バイデン大統領に一任しました。

同じころ、USスチールの拠点があるペンシルベニア州などの20の地元市長らは、買収を許可するようバイデン大統領に求めていましたが、2025年1月3日、「買収禁止の大統領令」が出されたのです。

バイデン大統領の言い分は『国家安全保障上の懸念がある』というもの。「鉄」が外国企業の支配下に置かれることにリスクがあるというのですが、本音としては、民主党の支持基盤である「全米鉄鋼労働組合」に配慮したのでは、と指摘されています。
その鉄鋼労組は反対の理由として「将来も雇用が維持されるかは分からない」と主張しています。

一方で、USスチールをめぐっては、アメリカ企業「クリーブランド・クリフス」が日鉄の半額ほどの金額で買収を試み、不成立になっていました。
鉄鋼労組の委員長はクリフス社と近いとされ、『日鉄の買収を妨害しているのでは』と指摘されています。