黒い赤ちゃん

さらに、PCBを食べてしまった親から、黒く色素沈着を起こした赤ちゃんが次々と生まれ世の中を震撼させた。後にPCBには毒性があること、加熱するとさらに猛毒のダイオキシン類に変質することが判明した。それらが胎盤やへその緒、母乳を通して胎児に移行したケースも確認された。

事件発覚からことしで57年となる。当初は時間がたてば体内から排出されると考えられていたPCBやダイオキシン類は、未だ被害者の体内に残存し続けており、完全に排出する方法は確立されていない。そして多くの被害者が、自分の子どもや孫にも、似たような症状が出ていると訴えている。

患者認定の厳しい基準

カネミ油症の患者認定基準は2004年以降、体内の「血中ダイオキシン濃度」を柱としている。その壁は高く、汚染油を食べて自覚症状があっても認定されない「未認定患者」が多く存在する。

事件が発覚した1968年当時、被害を届け出たのは約1万4千人。しかし、カネミ油症の患者と認定されているのは約2400人(故人含む)。被害者が集中発生した地域の一つ、長崎県五島市奈留島では、事件発覚さえも知らず汚染油を食べ続けた人たちもいた。届け出た人数は、被害者の一部と考えられる。

次世代の中にも、カネミ油症の患者認定を求めている人が多くいるが、「血中ダイオキシン類濃度」を柱とする現行の基準で「未認定」となっている。