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第1グラウンド第4試合、常翔学園(大阪)と天理(奈良)の名門校同士の対決は、最後の最後まで勝負の行方が分からない激闘となりました。春の近畿大会では、追いつ追われの大接戦を演じた両チーム。この試合も、攻守が目まぐるしく入れ替わる一瞬たりとも目が離せない展開となります。先制したのは天理。試合開始のキックオフから素早い出足で攻め込むと、強いコンタクトが自慢の常翔学園に対して一人一人がしっかりと身体をあてて攻撃のリズムをつくります。そして開始1分、SO安川和志選手の絶妙のキックに反応したWTB坂田弦太郎選手が、インゴール右隅でボールを押さえてトライ。あっという間に5点を奪います。
いきなりのビハインドを背負った常翔学園、それでもあせらず反撃します。勢いに乗って攻め込んでくる天理に対して、全員が体を張ってピンチをしのぐと、縦に強いランナーが、鋭い突破をみせて攻撃を演出していきます。しかし、高いワークレートを武器に複数の選手が突き刺さるタックル繰り出す天理のディフェンスの前に、なかなか敵陣深くまで攻め込むことができません。その後は両チーム無得点のまま、瞬く間に時間が過ぎていきます。
常翔学園にようやくチャンスが訪れたのは、前半の22分を過ぎてから。FB松井成悟選手の完璧なキックで天理陣内22mラインの内側まで攻め込むと、FW陣が圧力をかけて天理のペナルティーを誘発します。ゴール前中央絶好の位置でのペナルティー。PGも考えられる場面でしたが、常翔学園・井本章介主将はあえてスクラムを選択。得意のスクラムで天理を押し込んでさらに敵陣深くまで攻め込んでいきます。そして29分、そのスクラムを押し込んだ後、SH元橋直海選手が、ディフェンスの薄くなったサイドついて中央にトライ。ゴールも決めて7対5と逆転に成功します。
さらに、ラスト1プレーとなった前半のロスタイム。センタースクラムのチャンスをつかむと、全員が素晴らしい集中力をみせてチャンスをものにします。再びスクラムを押し込んだ後、常翔らしい縦への連続攻撃を仕掛けると、最後は左に展開してWTB正脇俊輔選手がトライ、12対5と点差をひろげて前半を折り返しました。
前半終了間際に自慢のディフェンスがくずれて連続失点した天理。しかしサイドの変わった後半、すぐさま立て直します。鋭い出足で再び攻撃のリズムをつくると後半5分、今度は、1年間鍛え上げてきたモール巧みに押し込んでHO稲塚潤選手がトライ、12対10とPGでも再逆転が可能な2点差まで詰め寄りました。2点差となってさらに激しさが増す両チームの激突、この後は身体をぶつけ合う音が聞こえてくるような、息詰まる攻防の時間帯が続きます。
どちらに試合の流れが傾くのか、詰めかけた観衆も固唾をのんで見守る中、先に流れを引き寄せたのは常翔でした。天理のタッチキックのミスを突いて逆襲すると、縦に強いランナーが繰り返し体を当てながら、天理陣内深くまで攻め込んでいきます。
そして後半の27分、天理ディフェンスの白い壁に跳ね返されながらも、何度も何度も縦をついて攻撃を継続すると、最後はCTB園田攻晴選手が、タックルを引きずりながらゴールラインぎりぎりにトライ、17対10と再び点差を7点にひろげました。それでも、天理にとっては、1チャンスで同点可能な7点差、このあとのキックオフから気迫のこもった攻撃を仕掛けると常翔学園を22mラインの内側にくぎ付けにして、インゴールに迫ります。あと1本パスが通ればトライという場面をつくりますが、常翔学園も粘り強く、集中力の高いディフェンスでゴールラインを割らせません。
最後は、モールで攻め込もうとした天理のボールを常翔学園がもぎ取ってノーサイド。天理の気迫の攻撃を全員で防ぎ切った常翔学園が17対10で勝利。井本主将が「ゲーム中の遂行力、自分たちがやらなければならないことを、焦らずにしっかり遂行できていたのが勝利につながった」と語った常翔学園が、チームとしての成長を感じさせる戦いぶりで花園の全国大会では、初めて天理を撃破して3大会ぶり30回目のベスト8進出を果たしました。
3回戦の結果は以下の通り、関西の強豪同士の対決となった、東海大大阪仰星(大阪)と報徳学園(兵庫)の対戦は、前半から東海大大阪仰星が報徳学園を圧倒。初戦の2回戦で佐賀工に苦戦した反省をもとに用意周到な準備で報徳学園の強みをけした上で、前半のうちに仰星らしい多彩な攻撃で4つのトライを奪って勝負を決めました。31対5で勝利してベスト8進出です。














