2、3区の今江&鈴木で先頭か、先頭が見える位置に

吉田がリードして2区に繋ぐことが理想だが、2区以降の選手たちが吉田に頼るような考え方をしていたらチームとして強くならない。今江勇人(26)の2区起用は、吉田の福岡国際マラソン出場が決まってから、伊藤監督の中ではかなり早い段階に決めていた。

31日の練習前に取材に応じた今江は「吉田はマラソンの後なので、どの位置で来るかは色々なパターンを想定しています」と言い、3区の鈴木塁人(27)は「キーマンになるのは2区と3区かもしれません。2人で耐えしのいで、トップで4区にタスキを渡せたら」と話した。

今江は前回も2区で区間7位と悪くはなかったが、区間賞の太田智樹(27、トヨタ自動車)には1分02秒差をつけられた。「追い風で下り基調なので平地よりもタイムは速くなります。明日は自分の通過タイムを見てビビらず、ハーフマラソン換算59分台のペースで行けたら、と考えています」

ハーフマラソンの日本記録は1時間00分00秒。仮に59分45秒ペースなら、21.9kmの2区は1時間02分02秒になる。前回の区間2位相当のタイムだ。鈴木も3区は4年連続になり、2回目までは距離が13.6kmだったが、ペースがイメージできている。「前回は1kmあたり2分48~50秒でも43分34秒で区間11位でした。明日は2分45~48秒ペースで行きたいと思っています。アップダウンが適度にあるので、リズムは付けやすいコースです」

仮に2分46秒平均で15.4kmの3区を走り切れば、42分36秒で前回区間2位相当のタイムになる。2人の想定タイムの合計は1時間44分38秒になり、前回優勝のトヨタ自動車の3、4区合計タイムを15秒上回る。目標タイム通りにはなかなか走れないのが現実だが、GMOインターネットグループには「勢いがある」と伊藤監督。東日本実業団駅伝は1区の吉田、3区の今江、5区の嶋津雄大(24)、7区の小野知大(25)が区間賞で快勝した。東日本1区の吉田のように、誰かがチームを奮い立たせる走りをすれば、その再現が可能になる。

向かい風対策を1年間行ってきた6区の嶋津

GMOインターネットグループは5区に小野、6区に嶋津、アンカーの7区に村山紘太(31)を起用した。7区の村山は10000m元日本記録保持者で、前々回の1区区間賞選手。旭化成時代も含めて後半区間出場はないが、アンカーで複数チームの争いになったとき、最後で前に出る役割には打ってつけの選手である。

ニューイヤー駅伝の5区以降は向かい風となる。小野と嶋津は向かい風の東日本実業団駅伝で区間賞を獲得した。小野はニューイヤー駅伝でも、旭化成所属だった20年大会では6区で区間賞を獲得し、チームの優勝に貢献した。22年大会でも5区区間賞と、後半区間で力を発揮してきた。

そして嶋津も向かい風対策を、1年を通して行ってきた。前回は7区で区間29位、チーム順位も4位から8位に落としてしまったからだ。

「1年前はレース前日も、雰囲気に飲まれてオドオドしていましたが、今日は“やってやる”という気持ちでワクワクしています。前回7区で苦しい悔しい思いをして、それを晴らすために、そしてチームの優勝のために区間賞を取る。その勢いで1年間やって来ました」

前回は走りながら「フォームに迷っていた」という。箱根駅伝で向かい風は得意だと感じていたが、「5、6mの向かい風なら行けたのですが、10mくらいになると、どうやって走ったらいいかわからなくなって。意識が風に飛ばされるような状況で、レース中にフォームを探るなんてことはしたことがありませんでしたから」

1年間をかけて、向かい風のときのフォームではなく、向かい風に耐えられる通常のフォームを模索してきた。「肩が中に入って腕を抱える走りや、腰が落ちてしまう走りから、背中のところから胸を前に突き出すイメージで走ることを意識して改善してきました」

6区は最初の3kmは少し上りがあるが、そこまで風は強くない。残り8kmが向かい風になるが、東日本実業団駅伝で区間賞を取った5区が7.8kmで、強烈な向かい風だった。「その距離を向かい風でも走り切るイメージはできています」

選手個々に見れば他チームを上回る期待はできるが、チーム全体で見たとき、持ちタイムもレース実績もライバルチームの方が上である。伊藤監督もまだ「優勝を狙う完全な形になっていない」と話す。だが「今回は勢いで戦いたい」とも。勢いを付けるのは吉田なのか、吉田と同学年の2、3区の2人なのか。それとも後半区間の小野か、嶋津か。どこかの区間で勢いがつけば、アンカーの村山に良い形でタスキを渡すことができるだろう。

東日本予選に続き、勢いに乗って初優勝を飾る。そんな雰囲気がGMOインターネットグループに出てきた。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)

※写真は前日練習を行う吉田祐也選手