江戸でも令和でも変わらないこと

冒頭に紹介した江戸時代の「掛売」から数百年。日々の買い物でいちいち現金を使わない暮らし方が、キャッシュレス決済となって再び復活しつつある今日の日本。

経済産業省は、23年発表の「キャッシュレスの将来像に関する検討会」とりまとめで、キャッシュレス推進の社会的意義を以下のように説明。

「人々と企業の活動」に密接に関わる「決済」を変革することで、現金決済に係るインフラコストの削減や業務効率化・人出不足対応等の既存の課題を解決し、データ連携・デジタル化や多様な消費スタイルの創造など、新たな未来を創造するものと捉えています。

新たな技術を活かしたキャッシュレス決済の推進で、先行きにはいろいろいいこともあるのかも知れません。
ただし、どれだけ技術が進んでも「買い物をしたらお金を払わなければならない」ことは江戸時代も今も変わりありません。

江戸でお金といえば、「江戸っ子は宵越しの銭は持たぬ」という言葉もあって、「江戸っ子は得た金をその日のうちに使ってしまって、翌日に持ち越すようなことはしない」(『故事俗信ことわざ大辞典』小学館)とか。
日々の払いと掛売がどう両立していたのか、詳細は不明ですが、もしかしたら、江戸っ子が気前よくツケで結構な買い物をしていて、大晦日に大変苦労していたのかも知れませんね。

注1:TBS生活DATAライブラリ定例全国調査は、TBSテレビをキー局とするテレビの全国ネットワークJNN系列が、毎年11月に実施する大規模ライフスタイル調査で、男女13~69歳を対象にしています。今回分析した首都圏データはTBSテレビの担当分で、東京駅起点30km圏(東京・千葉・埼玉・神奈川)在住者が対象です。
注2:キャッシュレス派と現金支払派の両方の選択肢を選んだ人が3人いましたが、個別の集計・分析からは除外しました。

引用・参考文献
朝尾直弘ほか編(2000)『日本歴史大事典』第一巻 小学館.
経済産業省ウェブサイト 2024年12月22日閲覧.
北村孝一編(2012)『故事俗信ことわざ大辞典』第二版 小学館.

<執筆者略歴>
江利川 滋(えりかわ・しげる)
1968年生。1996年TBS入社。
視聴率データ分析や生活者調査に長く従事。テレビ営業も経験しつつ、現在は法務・コンプライアンス方面を主務に、マーケティング局も兼任。

【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版(TBSメディア総研が発行)で、テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。2024年6月、原則土曜日公開・配信のウィークリーマガジンにリニューアル。