「1日100万回接種」の始まり

大袈裟ではなく人類が滅亡へ向かっていくのかもしれないという爆とした不安が世界を支配していたようにも思われる。この不安の大きさが、コロナワクチンの待望論に繋がっていった。

コロナウイルス発覚から2年以上が経過した2021年2月頃から、日本ではようやく新型コロナワクチンの接種が始まった。当初は、感染すると重症化するとみられた高齢者や基礎疾患のある人が中心で、ワクチンが入荷され次第、60代、50代と年齢の高い方から順に接種が始まっていった。しかし、この旺盛な接種熱の影で、すでにもう一つの顔が垣間見えていたのだ。

私は、2021年夏頃、当時の菅義偉総理が発した「1日100万回接種」の大号令の下、コロナワクチン接種が大規模接種会場や個人接種が行われていたクリニックなどを取材していた。そこで、一人の医師に出会った。彼はワクチン接種を進める傍ら、警察から依頼を受けて様々な不審死などの死因を調べる監察医を務めていた。その医師が「昨夜、ある遺体を診たのだが…」と切り出し淡々と話を始めたが、それは私の脳の奥深くまで刺さり、その後の取材態勢を大きく変える端緒になった。