「51になる歳にこんな状態になるなんて」

6月、すでに夏の日差しの神戸のグラウンドに、イチローの声が轟いた。「KOBE CHIBEN」は、現役引退後に作った野球チームだ。野球を純粋に楽しみたい。イチローの思いに賛同した、同級生や呑み仲間が集まった。経験の有無は問われない。

イチロー:清家くんライト、ファーストに紺野くん。僕、ショート入って・・・廣澤くんサード。

イチローがチームを率いて5年になる。 練習は真剣そのもの。イチローが大切にしているのは、懸命にボールを追う姿勢。仲間たちのプレーに一喜一憂していた。

イチロー:あー、疲れた・・・。疲れたよ。

ベストを尽くす姿勢は、ここでも変わらない。

(ファーストゴロの際、ベースカバーに入った投手へのトスについて指導)

イチロー:だいぶトスが速くないと。ベースの近くだと捕りながら(ベースを)探さないといけないんで。なるべく速く。最低それくらい。(足が)速い選手は(ベースを走り)抜けられちゃうんで・・・もう一本。(実践して)タイミングとしてはそういうこと。

今年は、あの松井秀喜(50)もチームに加わることになっていた。

イチロー:(三塁を守り三塁線への打球に飛びつくイチロー。)こんなユニフォーム汚すことないのにね。高校時代はこれが嫌でね、僕はダイビングとかしなかった。真っ白のユニフォームが僕のプライドだったんで。ユニフォームを汚さないっていうのが僕の大事にしてたことだから。51になる歳にこんな状態になるなんて考えられないよね。

「高校野球のレベルを楽々と駆け抜けてプロへ行く」そう誓った若き日が、今は懐かしい。

泥だらけになりながら白球を追う51歳

チームは、高校野球女子選抜との対戦を控えていた。女子野球の普及に繋がればとイチローは、3年前から毎年試合を行っている。メンバーには松坂大輔(44)もいて、回を重ねるごとに注目度が高まっていた。

高校時代、ピッチャーだったイチロー。今も、マックス138キロを出す。女子に130キロを超す投手はまだいない。未知のレベルを体験してほしいと、練習を重ねた。

イチロー:もはや女子は完全にナショナルチームに近い状態でくるわけだから。お客さんも来てくれるしね。まず普通に野球ができなきゃいけない。遊びじゃないって言ってるし、実際そうだし。勝負だからね。