従業員への被害も深刻 対策は?

小川彩佳キャスター:
経営者に対する被害だけでなく、従業員に対する被害も深刻です。

調査報道部 守田哲 記者:
M&Aは世界中で行われていますが、神戸国際大学の中村智彦教授によると「EUでは従業員の給与や労働条件が大きく変わる場合は、必ず事前に通告しないといけない。また日本では、従業員保護のルールが遅れていたことが今回の問題の根底にある」と指摘しています。

小川キャスター:
なぜ、こうした被害が多発しているのでしょうか?

守田記者:
日本の中小企業は300万社以上にのぼります。しかし、経営者の高齢化による後継者不足が今回の問題の背景にあると思います。

被害企業を取材した際に、「恥ずかしい」「取引先に申し訳ない」などの理由で取材を断られる事が多々あります。正確な数は分かっていませんが、被害企業の実際の数はかなりの数に上るのではないかと感じています。

今後、捜査機関がこうした悪質な買い手企業を摘発するのかどうかも注目されます。

小川キャスター:
まさに今わかっている被害は氷山の一角と言うか、泣き寝入りしている事業者も多いのではないかと想像します。被害をこれ以上広げないためには何ができるのでしょうか。

教育経済学者 中室牧子さん:
今回のようなことがなぜ起こるのかを改めて考えてみると、買い手と売り手の利害関係者の間で、当事者で持っている情報にかなり大きな差があるということなのではないかと思います。

特に中小企業のM&Aの場合、買い手の情報がほとんど明かされないことがよくある話だそうで、事業譲渡についての専門的知識を持たない売り手側からすると、悪質な業者が入ってきた時にも問題を見抜けないということが起こってしまうのではないかと思います。

そうすると、こういった問題を解決するには買い手と売り手の情報を限りなく透明にしていくことが非常に重要かなと思っています。

例えば結婚や求職のマッチングサイトように、買い手と売り手の情報がかなり明らかになっているとM&Aにおけるマッチングの問題も解消される可能性があるので、完全に結婚や求職のようにはいかないかもしれないけれども、同じような形を目指していくことが解決のひとつとして考えられるのではないかと思います。

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<プロフィール>
中室牧子さん
教育経済学者 著書「学力の経済学」など
教育をデータに基づいて分析

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