美術セットとVFX技術が生み出す、映像の新たな可能性

俳優の芝居を見せる場面と、物語の流れやスケール感を重視する場面では必要な映像も変わる。「芝居がメインのシーンでは、それを崩さないためにVFXを絡めない構成になっています。『ここまでセットの壁があったほうがいいですよね』と美術スタッフと話し合い、セットの映像だけで完結できるよう追加で対応してもらうことも。俳優の表現を最大限に引き出せる環境づくりに努めています」。

同セットの世界観の精巧さについて関氏はこう続ける。「担当デザイナー・岩井憲さんのことは、以前から細部の作り込みがすごいなと思っていました。いざ出来上がったセットを見たらスケール感が桁違いで、もはや全て本物に見えるほど。岩井さんはカメラを構えた後でも気になるところがあると、走って直しに来てくれます。細部までこだわって調整する姿を見て、こちらも背筋が伸びる思いでした」と、撮影中での逸話を披露。

そういった細部のこだわりはカメラを通して際立つもので、「床や壁などの質感の違いをはじめ、岩井さんの汚しの技や色味の抑え方が素晴らしい。俳優さんの芝居を引き立たせるために彩度を調整して、セットと演者の見え方のバランスをよくしている」と、美術チームへのリスペクトを口にした。