芝居とカメラの調和が生み出すもの――少ないテイクで最大限の“生っぽさ”を引き出す

塚原組での撮影のモットーは「テイクを最小限に抑えること」だという。「回数を重ねすぎると、どんなにベテランでも慣れや疲れが出てきてしまう。なるべく新鮮な芝居を切り取ることを大切にしていて、塚原組でよく言う“生っぽさ”を目指しています」と、関氏。
その象徴とも言えるのが、第6話での鉄平(神木隆之介)と朝子(杉咲花)の告白シーンだ。「神木さんから演出の提案があったようで、監督から『恋愛ドキュメンタリー番組のような映像にしたいから、ちょっとした手ぶれ感も出してほしい』とリクエストがありました」と撮影の裏側を明かす。さらに告白後に続くじゃれ合いのシーンはアドリブだったそうで、2人の自然な演技に塚原組がフォーカスする“生っぽさ”が溢れた映像となった。

関氏は、自身の中に画角を決める基準はないと語る。「俳優さんの芝居や、そのシーンが持っている意味を自分で解釈しながら決めていて。いい意味でセオリーというものが自分の中にないので、縛られることなく撮ることができています」。
そんな関氏は、神木が撮影現場で見せるアドリブに楽しみを感じている。「例えば第1話で、履いていた靴下を投げる動きなどは、”おお、きたな!”と内心盛り上がりながら撮影していました。撮影現場で即興的に生み出すセッションが一番楽しいですね」と、俳優と呼吸を合わせる。誰よりも近くで俳優の芝居を見つめ、時には俳優の芝居にグッとくることもあるというる関氏だが、撮影中は「自分が一番冷静でいることを心掛けている」と口にする。
「塚原監督はドライから芝居に感情移入して、泣いてしまうタイプなのですが、それを引っ張り戻すのが僕の仕事。塚原監督が芝居を見て『こうしたい』という希望を言ってきても、それが流れとしてピンとこない時に『これを見せないといけないんじゃないの?』と伝え、軌道に戻すこともあります」と、長年のタッグでバランスを保っているのだ。

関氏は最後にこう締めくくる。「俳優さんたちの気持ちが動いている瞬間を“生っぽく”撮っていくことで初めて視聴者の皆さんの心を動かすことができると思いますし、この塚原組の醍醐味でもある。それを切り取るのが僕の仕事なんです」。
ドラマ制作の現場で磨き上げられた技術と信頼関係が、俳優たちの芝居を引き立て、視聴者の心を動かす瞬間を生み出している。本作で描かれる物語の深みは、関氏をはじめとするスタッフ陣の努力と情熱の賜物。リアルとフィクションの境界線を揺さぶる塚原組の挑戦はこれからも止まることはないだろう。
