「ファンケル」完全子会社化へ ヘルスサイエンス事業の戦略は?

2024年、キリンホールディングスのもう一つの大きな注目点は、ファンケルを完全買収したこと。TOBを2回延長して、2300億円を費やして完全子会社にした。
――ファンケルが、どうしても欲しかったのか。
キリンホールディングス 代表取締役社長COO 南方健志氏:
5年前から、資本関係はあった。いろんな形で商品開発や、インフラの共同化は進めてきた。ファンケル社の持つブランド、顧客基盤、そして技術力は、大変素晴らしいものだと思っていたので、キリングループの中に入ってもらい、一緒に将来のヘルスサイエンス事業の成長ドライバーになって欲しかった。
――ヘルスサイエンスというのは、健康食品事業。サプリメント・錠剤・ドリンクなどがあるが、ファンケルは化粧品もある。そこにも相乗効果はあるのか。
キリンホールディングス 代表取締役社長COO 南方健志氏:
中からの健康も大事だが、外からの健康も大事なアプローチだと思っている。ファンケルの持っているスキンケア事業は、キリングループがこれから目指す健康事業にとって、非常に重要な役割を果たしてくれると期待している。
――2023年にブラックモアズというオーストラリアの大きな健康食品会社も買収した。これは海外への販売でのシナジーを創出したいということか。
キリンホールディングス 代表取締役社長COO 南方健志氏:
ブラックモアズは、90年以上の歴史のある健康食品会社。オーストラリアに本社あるが、実際には、東南アジア・中国でも非常に幅広く事業を展開していて、強いブランド力・顧客基盤を持っている。これからこのアジアパシフィック地域で、ファンケルも一緒になり、3社が持っている強みを掛け合わせながら、いろんな提案・チャレンジをして、健康課題に向き合っていく企業として、最大級のヘルスカンパニーを目指したい。

キリンが医療域での研究開発を始めたのは1982年。2010年に世界で初めて免疫の司令塔を活性化できる「プラズマ乳酸菌」を発見した。そして2020年に日本初の「免疫での機能性表示食品」が受理されている。
――元々、ビール会社であるキリンには、こういう技術の素地がたくさんあるのか。
キリンホールディングス 代表取締役社長COO 南方健志氏:
100年以上の歴史のあるビール事業から、培われた「発酵バイオテクノロジー」が、非常に強みだ。バイオテクノロジーは「生き物の力をいかに引き出すか」ということだが、それがあるから40年前に医薬事業にも参入し、大きく成長している。これからヘルスサイエンスは、大きな事業として成長できる。この技術が、事業の支えとして、これからも大事な役割を果たすのではないかと思っている。

――キリングループの現在の売り上げ概要を見ると、ビールは半分ぐらいになっており、医薬事業が大きい。今、ヘルスサイエンス事業が1034億。これをどのぐらい大きくしたいのか。
キリンホールディングス 代表取締役社長COO 南方健志氏:
できれば2030年頃には、3000億円規模ぐらいには持っていきたい。それぐらいのスケール感を持たないと、「次の柱」と言えない。今回、加わったファンケルとブラックモアズを成長させるということがまず大事。その中で、いかにシナジーを生むかが、これからの大きなテーマだ。
――少子高齢化で、アルコール市場自体は頭打ちなので、「他の柱を」というのはわかるが、飲料事業の部分を深掘りし、飲料会社をたくさん買収する。あるいは、食品の別の分野に出るということもできたと思うが、ヘルスサイエンス事業に振っていく狙いは?
キリンホールディングス 代表取締役社長COO 南方健志氏:
酒類事業・飲料事業、そして医薬事業はグループにとって、これからも非常に重要な事業であることは変わりない。だが、これからの不確実性の高い時代を見据えると、次の強い柱を打ち立てておきたい。社会課題の中で、特に「健康」は、ますます重要になってくるので、このヘルスサイエンス事業を確立させて、しっかりとした屋台骨を持ったキリングループに成長させたい。
(BS-TBS『Bizスクエア』 12月7日放送より)














