新ビール「晴れ風」ヒットの要因 「日本の風物詩」支援の取り組みも

――ヒットした「晴れ風」。ここまで売れると思っていたか?

キリンホールディングス 代表取締役社長COO 南方健志氏:
正直、最初見たときに少し驚いた。「本当にこれ、いけるかな?」と思ったが、正直、何かやってくれそうな予感はした。

2024年4月2日に発売された「晴れ風」は、わずか10日で100万ケースに到達。3か月後には年間目標としていた430万ケースの8割となる350万ケースを突破し、年間の販売目標を当初の1.3倍となる550万ケースに上方修正した。

――目標は達成できそうか?

キリンホールディングス 代表取締役社長COO 南方健志氏:
そうですね。おかげさまで発売以来、強い支持をもらっていて本当にありがたい。

――「晴れ風」は、第2の柱になったと言えるか。

キリンホールディングス 代表取締役社長COO 南方健志氏:
もうなっている。さらに来年以降も成長を続けていきたいと思っている。

――缶の色が緑、名前もビールの特徴も表していない、会社名も入ってない。飲んでみたら、これまでのビールと違って、飲みやすいが、ふわっとした感じがあった。

キリンホールディングス 代表取締役社長COO 南方健志氏:
この商品は「斬新性」が良かったと思っている。味覚、パッケージ、そしてネーミング。従来のビールとは一線を画した「新しい世界観」を醸し出すことができたことが、大きな成功の要因ではないか。

――味で言うと「ドライ」が出て以来の爽快感やすっきり感とかから距離を置いているし、「生」ではない。過去30年ぐらいのビールの常識とはやや違うビール作りを担っている。

キリンホールディングス 代表取締役社長COO 南方健志氏:
そういう意味では、従来の常識を打ち破った。特に今回の「麦芽100%」は、普通に作ると、結構コクがあって、がっちりした味になる。そこを非常に上手く飲みやすい味に、完成度高く仕上げている。元醸造の人間としても、よくできていると思っている。

この「晴れ風」。「晴れ風ACTION」という面白い取り組みをしている。ビールを買うと、「350ml」1本で、0.5円(50銭分)が自動的に寄付される仕組みだ。それに加えて、QRコードを読むと自分の好きな地方自治体の花火大会や、桜の保全などにも0.5円寄付されるという。

――本来だったらキリンの取り分だったものが寄付される。利益率が落ちるが、それでもよいのか。

キリンホールディングス 代表取締役社長COO 南方健志氏:
それよりお客様に喜んでいただく。特に社会問題に貢献しているということで、満足してもらうことを大事にしたいと思っている。

――桜の木の保全や花火大会に使われるのは、ビールとの親和性があるからか。

キリンホールディングス 代表取締役社長COO 南方健志氏:
日本の自然・伝統・風物詩とともにビール文化は育ってきた。我々としては何らかの恩返しをしながら、ビールファンを増やして、自身の成長にも繋げたいという思いがある。

――「商品への共感」。これも支持の一つに繋がっているのか?

キリンホールディングス 代表取締役社長COO 南方健志氏:
単に「物の良さ」というだけではなく、コトに対しても貢献していることの方が、良い商品に価値をつけていく上で「非常に大事な取り組み」というのが、我々にとっても大きな発見だった。

――商品にストーリー性を持たせるということがすごく大事で、そのことがないとなかなか消費者にアピールしない時代になっている。

東京大学名誉教授 伊藤元重氏:
そういう「ストーリーマーケティング」は昔からある。ただ、「晴れ風」で、特に大事なのはその社会的価値。単なるブランドバリューではなく、社会的価値を入れたところが、非常に面白い。インパクト投資(財務的なリターンと同時に、社会や環境へのポジティブな影響を意図した投資行動)でも、よくそういうところが非常に大事になってきている。そういう意味で、商品の価値を広げてくれる大きな役割を果たしたのではないか。