専門家「3つの想定外」

龍谷大学の李相哲教授は、尹大統領にとっては「すべてが“想定外”だった」ということです。想定外だったのは以下の3つです。
●政治活動を禁止(国会の解散を狙った)
→反発した議員190人が国会に集結。野党だけでなく与党も加わって全会一致で解除を求められた
●メディアを統制(事態の深刻さを伝えるため)
→戒厳司令部がメディアの統制もできなかった
●国民の言論・集会を制限(国論の統一を図るため)
→多くの国民が集結しデモ活動が起きた
これら全てが想定外だったというように分析しています。
ホラン千秋 キャスター:
大変な混乱だったと思うんですけれども、ここに至るまでの予兆というか、どれくらい不満などがくすぶってこういった事態になったのか、現地にいて感じることありますか?
渡辺秀雄 JNNソウル支局長:
尹大統領の支持率は直近でも10%後半とかなり低迷していました。しかし、今回の「非常戒厳」を出すということに関しては全く予想していませんでした。私は昨日の晩は街中で会食をしていたのですが、突然のことでびっくりして、慌てて出社したという状況でした。
井上貴博 キャスター:
ここ数年韓流ドラマも相当流行っていますので、今回のニュースを特に身近に感じてらっしゃる視聴者の皆さんも多いと思うんです。
よくわからないのが、政権としてにっちもさっちもいかなかった、もう打つ手がないということで、まさかと言われていた、無謀だと言われていた最後のカード「非常戒厳」を切ったわけですけど、尹大統領の頭の中でどんなシナリオを描いてたのか、そしてスタンドプレーなのか、そのあたりについてどんなことを想像しますか?
渡辺 ソウル支局長:
難しいのですが、先ほどの李相哲先生のお話にもあったように、国会を軍で掌握してコントロールをしていこうというのが頭の中にあったという見方もあります。一方で、元々うまくいかない計画というふうに割り切って、こういった大きな騒ぎを起こすことによって、いかに野党側がひどいことをしてきたのかというのをアピールする場にしたかったのではないかという見方をするメディアもあります。
ホランキャスター:
「非常戒厳」という44年ぶりの、ある意味切り札的な手法だと思うんですけれども、それが逆に役に立たなかったとなると、その持つ重さのようなものも結局、効力を失ってしまうのかなという気がしますね。
荻谷 麻衣子 弁護士:
尹大統領はある意味頑固で、自分の正義感を曲げない人です。だからこそ日本に対する関係も世論を気にせず、友好関係を築いてきたんだと思うんです。 今回、国内の中で相当に追い詰められて、それが極端な形で出てしまったのかなと。
もしかしたら尹大統領自らの正義感では「国政を正常化するためにはここまでやらなきゃ仕方がないんだ、ここまでやれば国民世論も自分の味方してくれるかな」と思っていたかもしれない。でも結果的にその読みを誤って、自分の状況を最悪の状況にしてしまったというところなのかなと見ていました。
井上キャスター:
韓国にはまだ民主主義が根付いていないのかなと思ってしまいましたが、尹政権になってようやく日韓関係が少し改善してきました。しかし、尹大統領が倒れる公算が高い。反日政権に戻ったときに、一番ほくそ笑んで見ているのは中国であり、北朝鮮であり、ロシアなんじゃないかなと。
荻谷 弁護士:
そうですよね。特に北朝鮮は韓国がオウンゴールをしてくれたみたいで。自分たちは何もしてないのに、結局韓国の大統領が最も苦しい立場になってしまったのはありがたいことだなと思って見ている可能性はありますよね。ただまだこの政権がどうなるかは見てみないとわからないので、私達も冷静に見ていく必要があるのかなと思います。