作家 秋元松代との仕事
久野:秋元さんとの出会いは「山ほととぎす」なんだけど。
武:仕事してもらいたいって言ったら、もう言下に「あたしに書かせなさい。原作要らない」って言うわけ。びっくりしたけど、高浜虚子※については、割にちゃんと勉強してるし、よく知ってるし。先生のお兄さんが高浜虚子の弟子だとは、その頃知らなかったの。
※ 高浜虚子(1874-1959)明治から昭和初期に活躍した俳人・小説家。俳誌「ホトトギス」の発行人として知られる。「山ほととぎす ほしいまま」の主人公杉田久女は俳句の師であった虚子を敬慕し続けたものの、何らかの確執から破門され、不遇の後半生ののちに病死する。秋元松代の兄は俳人秋元不死男。
それで、(モデルになった杉田久女の)お嬢さんが結婚して、石さんっておっしゃったんだけど、その人にお母さんの話を聞いてたら、もう、おんおん泣きだしてね、その石さんが。
久野:それが、栗原小巻がやったあの役の人でしょ。
武:そう。おんおん泣きだして。あたしは、困ったなと思ったけど、先生、全然困ってないんだよね。
久野:うん。
武:冷静だから。なんか面白いな。やっぱり、鬼のような先生だったね。女の人であれだけ書ける人っていうのはいないし。あたしがすごく好きなのは、偉いところ、強いところ、大きなところにぶつかっていく姿勢。
