約2000年前から現代まで 冬は手彫りの洞窟で過ごす遊牧民

イランの世界遺産「メイマンドの文化的景観」

実は現代でも、凝灰岩を掘った洞窟に人が暮らしている村がイランにあります。それが世界遺産「メイマンドの文化的景観」。メイマンドというのは村の名前で、凝灰岩の崖を掘った洞窟住居が400もあり、ちゃんと人が暮らしています。

メイマンドの遊牧民は家畜と共に季節毎に移動する

彼らは遊牧民で、羊など家畜を連れて移動し、春は草原、夏は山の家、そして冬は洞窟住居で過ごします。番組でこの洞窟住居を撮影したのですが、内部は意外と広く、家畜のための部屋までありました。囲炉裏もあって、そこで長年にわたって料理を煮炊きしてきたため、天井も壁も脂と煤で真っ黒になっています。実はこの脂と煤が凝灰岩の壁を保護していて、「人が住まなくなって火を焚かなくなった洞窟は崩れてしまう」と村人は言います。

メイマンドの洞窟住居

メイマンドの村人は約2000年前からこの地に住み、手掘りで洞窟の家を作り、変わらぬ遊牧生活を続けてきました。世界遺産になるための条件に、「ある文化を特徴づけるような伝統的集落や土地利用の優れた例であること」というのがありますが、イランの洞窟村はまさにこの条件を満たすものとして世界遺産になっています。