完成映像を見ずに楽曲を納品。選曲担当との連携が生むドラマ音楽の奥深さ


これまで数々の映画音楽も担当してきた佐藤氏。映画音楽では佐藤氏ら作曲家が撮影や映像を見ながら監督と相談し、どこのシーンでどんな音楽をかけるかを細かく決めるそうだが、ドラマでは作曲家は完成映像を見る前に全ての楽曲を納品し、「選曲」という担当者がどの楽曲をどの場面で使うのかを決める。

本作での音楽の使われ方は「驚きばかりで面白い」と語る佐藤氏。

「『この曲はあのシーンに当たるだろうな』と想定しながら書いているのですが、本編では全く違う使われ方をしていて。でも、これがドラマ音楽の面白さでもある。映画音楽の場合は事前の相談から変わることはほとんどありませんが、ドラマは選曲担当の使い方次第で作品がガラッと変わる。僕とは別の発想がそこに乗っかるので、新たな発見があるんです。今回は僕の音楽演出表現の幅をさらに広げてくれるような感覚があり、とても勉強になっています」

と、選曲担当との化学反応について語る。


佐藤氏は本作の選曲担当・遠藤浩二氏のことは以前から知っていたそう。

「作曲家としての遠藤浩二さんはもちろん存じていましたが、選曲家としても活動されていることを今回初めて知り驚きました。作曲家に選曲をしてもらうということは、監督が別の監督兼編集の人に編集を任せるようなもの。そういったことは初めてだったのでどうなるのかな…と思って」

と当時の心境を吐露。

「でも、完成映像を見て、遠藤さんが作曲家の立場になって曲を当ててくださっていることがわかりました。おそらく作曲家同士にしか伝わらないかもしれませんが、構成と編集が気持ち良かった。すごくうれしかったです」

と、遠藤氏への信頼を語った。