トランプ政権の今後は? 気になる外交・経済政策は?
――今後の話だが、トランプ政権の2期目はかなり求心力が強くてダイナミックに政策を進めていくのか。第1期の時みたいにホワイトハウスの中でゴタゴタはあるのか。

共同通信 客員論説委員 杉田弘毅氏:
当然あると思う。エネルギーの部分。世界で戦争がいろいろ起きているが、世界で戦争が起きているが、バイデン氏のもとでは戦争が1回も終わったことない、悪化するばかりだと。ハリス氏はバイデン氏の継続をやると言っているので、戦争を終わらないと毎日たくさんの子供たちや人が死んでいく。アメリカは兵隊を送っていないが、当然ながらアメリカ人も何とかしなくではいけないとみんな思っている。トランプ氏であれば何らかのディール(取引)をして、停戦に持ち込めるのではないかという淡い期待みたいなものがある。
なのでそこがもう一つトランプ氏にプラスになったことだと思う。トランプ氏はエネルギーを掘って掘って作るんだと言っている。環境的には大変問題があるが、これはトランプ氏の大きな(外交上の)カードになっている。だから戦争でプーチン氏をテーブルに着かせるためには何がいいかというと、石油の値段。石油の化石収入で戦争を続けているだけなので石油の値段を下げることによって、プーチン氏も戦費が足りなくなって焦るのではないか。
――アメリカがたくさん掘れば原油価格が下がって、間接的にロシアにも打撃になるのか。

共同通信 客員論説委員 杉田弘毅氏:
そういう読みがある。それから中東に関してももう少し、イスラエルやパレスチナの面倒を見るという方向に持っていかなければいけない。サウジとアメリカの間での力関係をアメリカ優位に持っていくためには「エネルギーの増産」は一つの手だと思う。あとイランもだが、トランプ氏は世界の強い人々と交渉してディールすることがこよなく好きな人。いかにカードを切り出すかというところでトランプ氏が頭に描いていることなのではないかと思う。この2つの戦争は誰が見ても、もうそろそろですよねと。戦線動いてないし、中東についてはもうハマスなどめちゃくちゃ破壊されている。もうそろそろだという機運はいい。そういう中でトランプ氏がボールを投げてきた時に、それを奇禍として「もうやめますか」という話になる可能性は大いにあると思う。
――第1期のときにはとにかく減税やってもうまくいった。金利も上がらず、株価が上がって景気も良くなったと思う。今度は同じことが実現する可能性はあるのか。
慶應義塾大学 総合政策学部教授 白井さゆり氏:
第1期のときは、コロナ危機が起きたのでものすごい低インフレ。0%ぐらいの低インフレになったから見えなくなった。
――元々想定インフレの時代だった上に、コロナ危機もあって需要がなくなったから減税しても心配しなくてよかった。
慶應義塾大学 総合政策学部教授 白井さゆり氏:
はい。見えなかった。でも今回はまた本格的にさらに上乗せして輸入関税率を上げていく。それから不法移民を国外退去にすると、今でさえ賃金(上昇率)4%なのに人手不足になる。一見みんなの賃金を上げるようだが、人手不足によってアメリカの経済が停滞する可能性もある。そういうことが見えてくると、今回の4年でなので、本当の意味でトランプ氏がやりたい政策の効果がしっかり見えやすいのが今回だと思う。
――トランプ氏が「経済うまくやるんだ」と言っておきながら、逆にインフレが進んだら、あっという間に不人気になってしまうのか。
慶應義塾大学 総合政策学部教授 白井さゆり氏:
だから中間選挙とかどうなるか。そこが焦点だ。
完敗した民主党の今後は、どうなる?
――最後に民主党は今回やり込められた。党内で責任追及が始まっているようだが、この後、どう変わっていくのか。
共同通信 客員論説委員 杉田弘毅氏:
民主党は「バイデン氏の撤退表明が遅すぎた」と。バイデン氏の政策、特に経済政策をはじめ、何もやっていなかった」とバイデン氏をA級戦犯的にして仲間割れを防ごうということだが、やはり政策的には、価値観とか多様性などを重視してきた「民主党の左派リベラル」の人たちの主張がグループの中でしかおさまっておらず、アメリカ人はそこに呼応してこなかったことが今回の選挙で非常に明らかになった。そうすると民主党の保守派・中道派が力を増していくことになると思う。ただこの価値観を信じきっていている層がいて、票もある程度持っている。ここを説得していくためには予想しづらいが、あと1、2回選挙で負けて、大きな揺れ戻し、地殻変動が起きていく必要があるかもしれない。
――そうすると民主党の退潮は、少し長い期間で起きるということか。
共同通信 客員論説委員 杉田弘毅氏:
トランプ政権の経済がうまくいかないと、次の2028年の大統領選で経済問題・政策についてより人々にアピールできて、しかも信用できるような政策を出せる、同時に信用できるといった候補者の人が出てきて、魅力的なメッセージも出せたら、今回共和党が取った若者含めた票田がごっそりと民主党に行く可能性もある。
(BS-TBS『Bizスクエア』 11月9日放送より)














