きっかけは一本の電話
「世界遺産の島「野崎島」がいまどんな状態か知ってますか?」

2024年夏、これまでもいろんな情報を伝えてくれていた長崎大学の出水享(でみずあきら)さんからそう聞かれたとき、何のイメージもわかなかった。世界遺産の取材とは縁がなく、野崎島どころか野崎島がある小値賀町にも行ったことはなかった。
野崎島は2018年に世界文化遺産の構成資産に認定された長崎県小値賀町の島だ。漠然と思い浮かぶのはこの島を象徴する「旧野首教会」。世界文化遺産に登録されてからは多方面から注目され島に光を当てた施設だ。今も何も変わらずにあの集落で存在を放っていると思っていたのだが・・・・。



「教会は今大規模な修理中で中には入れませんよ。周りの石垣をイノシシがいたずらして壊すので島は割と大変な状態です」
出水氏から聞いたのはともすれば人の目の届きにくい長崎の離島で起きている深刻な現状だった。世界文化遺産の構成資産なったものをどう保存していくか?これは世界文化遺産に指定される前から課題として指摘されていたことでもあった。課題は現実の問題になっている。現状を取材すべく島へと渡った。今回の報告は野崎島で行われた保存の取り組み「野崎島レスキュー隊」の同行取材です。

時間とともに表面化する世界文化遺産保全の課題
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歓喜の声が上がったのは今から6年前、2018年でした。「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」世界文化遺産への登録。

「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」は、17世紀から250年も続いたキリスト教禁止令の下、信仰がどのように続いたのか?その歴史を伝える12の構成資産で成り立っていて、その中に野崎島もあります。
世界に認められた地元の宝。しかし時間の経過とともに問題が表面化しています。