「もう”オカマ”って言われたくない」
近畿地方で男性として生まれ育ったマダムCOCOさん。
自身を男性と自認し、恋愛感情や性的魅力を感じる相手は男性だ。
ゲイだと認識したのは小学生の頃。初恋は?と尋ねると、「中学生の時」だと恥ずかしそうに答えた。
幼少期は、女の子と遊ぶことが多かったという。
マダムCOCOさん(60代)「女の子の姉妹も多かったし、小学生の頃から女の子とよく遊んでいたから、『オカマ』って言われることも多かった。中学時代は、年代的にも差別されるというか。もう、オカマって言われたくないから、逆にやんちゃなグループに居たりした。田舎から早く出たいと思っていました」
過去には女性と交際したこともある。
マダムCOCOさん(60代)「素敵な女性で好きだったけど、今思えばカモフラージュだったのかもしれない」
マダムCOCOさんは、田舎を出て大阪の美容専門学校に入学し、美容師としての人生を歩んだ。
やんちゃなグループにいたのも、田舎を出たのも、思えば、これまでマダムCOCOさんの人生における意思決定には、常にゲイであることに対する差別が影響していた。

それは、ドラァグクイーン”マダムCOCO”として多数のメディアにも出演する今も、変わらない。
「変態と思われて捕まるんちゃうやろか」

マダムCOCOさんは、トランスジェンダーではない。ドラァグクイーンでいる時間は、ブラジャーをつけストッキングをはく自分に酔うが、普段男性として生活している間は、別の感情を抱く自分がいる。
マダムCOCOさん(60代)「普段は、ブラジャーやストッキングを履いたり、買いに行ったりするのも嫌だから、女性の友人に『ちょっと買ってきてくれへん?』って言います。自分で買うときは今でも、『ヘアメイクの仕事をしています。』みたいな感じで買いに行くし」
マダムCOCOさんには、学生時代に感じた差別の感覚が、今も心の深くに残っている。
「変態と思われて捕まるんちゃうやろか」と冗談を交えながら話したあと、まっすぐに筆者を見つめ、こう言った。
マダムCOCOさん(60代)「多分その感覚は一生変わらへんと思う」