17年前から奈良県の寺に安置されている大仏。実は戦後の一時期、原爆で廃墟と化した広島の復興を見守った「広島大仏」だったということがわかりました。今回、60年以上の時を経て実現した『大仏さまの里帰り』を取材しました。

奈良の寺に安置された“かつて戦後の復興を見守った広島大仏”

 9月10日、広島本通商店街を進んでいく大仏、その名も「広島大仏」。戦後の一時期、広島の復興を見守り人々に親しまれた大仏です。数奇な運命をたどり広島へと帰ってきました。生まれ変わった街を見て何を思うのでしょうか。
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 奈良県安堵町の「極楽寺」。広島大仏は現在はこの寺に安置されています。寺に大仏が来たのは2005年。“かつて広島にあった”ということしか知らなかったと言います。
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 (極楽寺 田中全義住職)
 「こちらのお堂の仏さまが広島大仏、『阿弥陀如来』という仏さまでございます。ひょんなきっかけでと言うか、ある本、写真集を見てみると、その写真集に広島大仏さんが写っていらっしゃったと。なんとなく顔とか全体の大きさであったりとか、なんかこう似ているような気がして」

 専門家も交えて調査したところ、11年前の2011年にこの仏像がかつての広島大仏であることがわかったのです。
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 原爆で廃墟となった広島市内。人々が復興に向けて歩みを進める中、当時、県内の別の場所にあった大仏を犠牲者を供養するために迎えようという機運が高まりました。盛大なパレードが行われ、原爆ドームのすぐ近くに大仏は移されました。1950年から5年間、そこに安置されたのです。

 観光名所としても親しまれましたが、所有権をめぐる混乱が起き、所在不明のまま半世紀以上が経ちました。
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 広島の人々の記憶から消えていった大仏。「奈良にとどまるのではなく、再び広島の地を踏んでほしい」という思いを住職はあたためてきたと話します。

 (極楽寺 田中全義住職)
 「私はどちらかというと今のこの日本を平和に導いた第一歩を踏み出した人たちの思いを大切にしていかないといけないなと。“枯れた土に芽を植えた人たち”を私たちが忘れていては、きっと未来に平和はないんじゃないかなと」