2021年のクーデター以降、軍と民主派・少数民族の武装勢力による戦闘が激化しているミャンマー。内戦状態が長期化するなか、麻薬をめぐる深刻な問題も広がっている。
いまや世界最大の麻薬密造拠点となったミャンマーの国境地帯を取材すると、“新種の薬物”が流通しているとみられることも分かった。ミャンマー軍の関与も疑われる麻薬ビジネスの闇に迫る。
民主派「麻薬密売に軍が関与」無法地帯化するミャンマー
ミャンマーの民主派組織、NUG=国民統一政府は15日、傘下の武装組織が制圧したミャンマー軍の拠点から大量の麻薬を発見したとする声明を発表した。見つかったのは、ケシの実からとれるアヘン約2000キロ以上。
民主派側に投降した兵士らは「戦場で部隊の士気を高めるために麻薬を使っていた」などと話し、麻薬の使用を認めたという。
さらに、大量のアヘンが保管されていたことから、NUGは「ミャンマー軍が麻薬の密売や流通に関与していることを示す証拠だ」と強調した。
ミャンマー情勢に対する国際社会の関心が薄れていくなか、軍の関与までもが浮かび上がるミャンマーの薬物汚染は深刻な問題となっている。

UNODC=国連薬物犯罪事務所の報告書によると、ミャンマーでは2021年の軍事クーデター以降、ヘロインの原料となるアヘンの推定生産量が約1080トン(2023年)に急増した。
ミャンマーはアフガニスタンを上回り“世界最大の供給国”になったとされる。
近年はケシ栽培などの生産者が減少傾向にあったものの、クーデター後の通貨暴落や物価高騰といった経済の混乱によって、市民生活は困窮。少しでも収入を得るために“麻薬ビジネス”に手を染める人が増えているとみられる。

最大都市ヤンゴンなどでは、軍が治安維持のため深夜に外出禁止令を出しているにも関わらず、ダンスクラブは多くの若者で賑わう。闇夜に煌々と光を放ち、周囲に大音量を響かせながら営業している。
SNSにはクラブで若者らがヘロインや覚醒剤などの違法薬物を売買したり、使用したりする様子が投稿されていた。ある当局関係者はこう打ち明ける。
「クラブのオーナーたちは軍に賄賂を渡しています。軍は、若者らの薬物乱用には何も対策を取っていない。厳しい取締りをすれば、軍政に対する不満をさらに高める可能性があり、黙認している状態です」
