インドの世界遺産「エローラ石窟群」

サグラダ・ファミリアよりも時間をかけて作られた世界遺産が、インドの「エローラ石窟群」。1000年以上前にデカン高原の断崖を掘って作られた石窟寺院群で、南北2キロに34の寺院が点在しています。

高さ30m奥行き80mあるカイラーサナータ寺院

その中のひとつ、カイラーサナータ寺院はなんと150年かけて築かれました。断崖は固い玄武岩で出来ていて、それを人の手でコツコツと削って、高さ30メートル・奥行き80メートルもある大寺院を作り上げたのです。巨大な一枚岩から彫りだした、いわば世界最大級の彫刻。しかも単純な壁や柱だけではなく、神々の姿やゾウなどの聖なる動物たちの姿が精緻に刻まれていて、気が遠くなるような時間と手間がかかっているのです。作業した石工たちは、7世代にわたって岩を彫り続けたといいます。

シヴァ神を祀っているカイラーサナータ寺院

このカイラーサナータ寺院はヒンドゥー教の寺院で、最高神のシヴァ神が祀られています。中心部にはリンガと呼ばれる男性器を表した円筒形の大きな石があり、これがシヴァ神の象徴とされています。

リンガに触れ祈るヒンドゥー教徒

今でもヒンドゥー教徒が多数訪れるこの寺院。番組「世界遺産」の取材では中心部の礼拝の様子を特別に写真撮影することができたのですが、みなリンガの周囲に集まって、触り、拝み・・・シヴァ神への信仰の厚さが実感できるところでした。

ジャイナ教の石窟

エローラにはヒンドゥー教だけではなく、仏教とジャイナ教というインド発祥の宗教の石窟もあり、同時期に作られたことが分かっています。異なる3つの宗教が互いに排除せず共存しえたのは、古代インド文化の特徴である「寛容の精神」があったからと考えられています。この点も世界遺産に登録された理由のひとつです。