新たな視点と独自取材でお伝えする「eyes23」。罪を犯した人の立ち直りを支える「保護司」についてです。保護司はボランティアですが、今年5月には保護司が殺害される事件も起きました。制度はどうあるべきか。不良から保護司になった男性を通じて考えます。

「事件があったからといって身構えたり、距離が広がったりもしない」

事件は今年5月、滋賀県大津市で起きました。保護司をしていた新庄博志さん(60)が自宅で殺害され、新庄さんが保護観察を担当していた男が逮捕されたのです。

罪を犯した人の立ち直りを支える保護司。当事者たちは事件について、どのように感じているのでしょうか。

電気工事会社で働く十島和也さん。保護司歴6年の42歳です。

保護司としての活動は、いつも仕事終わり。この日、十島さんのもとにやってきたのは10代の兄弟。兄弟は傷害などの非行行為で保護観察処分となり、今年の初めから十島さんとの面談を続けています。

十島さん
「アルバイトは週5でいけているの?」

兄弟
「いや、今は週2になっちゃって。先週ちょっと休んでしまったんですよ」

十島さん
「微妙だよな。無理に働きたいだろうけど、無理に働いて倒れてもしょうがない。だから、体調と相談しながら」

兄弟の体調に気を配る十島さん。この日は、兄弟と母親との関係に話が及びました。

十島さん
「お前らが支えていかなきゃなって、そう簡単なことは言えないけど」

兄弟
「お母さんを助けたいと思っても、素直になれないんですよね」

十島さん
「そう。分かるんだけどさ」

兄弟
「反抗しちゃうんですよ」

十島さん
「ここで言っていることや思っていることを素直にお母さんに向けられるようになったら、最高じゃない?そういう気持ちがあるんだったらやってくださいよ」

兄弟にとって十島さんは…


「自分と年齢が近い人と話しても適当に聞かれたりしていた。怒るときはちゃんと怒ってくれるので、感謝でしかないです」


「真面目にやっていけたらいいなって。良いことや悪いことはいろいろあると思うけど、更生して続ければいいかなと」

十島さんとの面談は兄弟の支えになっていました。

十島さん
「本人が懲りて、真っ当に生きたいと思わないと、まず何ともならないと思う。それで思っていたってできないやつだっている。ちょっと横ぶれするのに少しでも支えぐらいになれればいいかな」

支える立場の保護司が殺害された事件について聞くと…

十島さん
「事件があったからといって別に身構えたりもしないし、距離が広がったりもしないし全く変わらず。『こいつに何かやられるかもしれないな』と思って話していたら、いつまで経っても心なんか開けないですよね」

保護司は非常勤の国家公務員ですが、実は報酬の無いボランティアです。十島さんはなぜ保護司になったのでしょうか。