名古屋市中区栄のドン・キホーテ向かいにあった栄広場は、通称「ドン横」と呼ばれ、そこに集まる若者たちは「ドン横キッズ」と呼ばれていました。
2022年6月に再開発で広場が閉鎖された後、ドン横キッズの一部は2つ通りを挟んだ広場などに、新しい居場所を求めて集まるように。居場所が見つからないまま、さまよい続ける若者の姿を追いました。
ショルダーバッグ1つで家出 繁華街をさまよい続ける17歳少女
栄のドン・キホーテ向かいにあった栄広場、通称「ドン横」。少年がカバンから取り出したのは大量のかぜ薬。一度に100錠も飲むのだと言います。
(少年)
「これ(薬)とこれ(薬)を合わせて飲むと宇宙旅行。頭がおかしくなるという意味」
2022年6月、閉鎖前のドン横で別の少女と出会いました。みこさん(仮名・17歳)。2022年3月から家出をしていると言います。
20代の男性と再婚した母親(49歳)への不信感から家に居場所を見いだせず、ショルダーバッグ1つで家出をしたと話していました。
バッグの中身は、下着・インスタント味噌汁・化粧ポーチ・財布・家の鍵。当時、ドン横にいるとその場の流れで遊びに行ったり、友達ができたりするからよく座っていると打ち明けてくれました。
あれから2か月。みこさんに再び連絡を取り、実際に会うことになりました。
(3月から家出中のみこさん)
「ドン横が閉鎖されているから、“お持ち帰り待ち”みたいな。歩いていると、お持ち帰りされるからうろちょろしています」
今も家には帰っていませんでした。ドン横閉鎖後も、栄周辺で居場所を探す日々を送っています。母親とは6か月ほど会っておらず、連絡も来ないことから「見捨てられた」と感じています。
生きていくために続けているのが、援助交際。週4回ほどSNSで知り合った男性と関係を持ち、お金をもらっています。荒れた生活について屈託なく話し、お金が貯まったら東京で暮らしたいと言います。
若い女性の現状に危機感を持ち、話を聞くために設けられた「街角保健室」

栄の中心から東へ行ったところにある池田公園。外国人も多い歓楽街の中心にあり、危ない雰囲気も漂っています。
ドン横の閉鎖後、一時ここにもドン横キッズが流れてきていましたが、池田公園に出入りしているホストの男性によると、最近はほとんどいないそうです。
池田公園は客引きの人が多くトラブルの可能性もあるため、未成年が多いドン横キッズは基本的にゲームセンターや室内で遊び、涼しくなったらオアシス21などに現れるのです。

池田公園では、週末になると広場の隅にピンクのテント「街角保健室」が建ちます。

代表の中谷豊実さんは高校の体育教師。コロナ禍で若い女性の自殺者が増えていることに危機感を抱き、産婦人科医の丹羽咲江医師と2021年から月に2回、若者の悩みを聞いています。
派遣型の風俗店「デリヘル」で働いているという19歳の女性は、街角保健室で今の仕事を続けるか悩んでいると話します。

ホストをしている交際相手の男性に泣きながら頼まれ、風俗の仕事を始めたという女性。ホストの彼にお金を使い続けるため、仕事は止められないと話します。丹羽先生は妊娠のリスクについて話した上で、他の仕事を探すようアドバイスをしました。

(咲江レディスクリニック・丹羽咲江医師)
「女性側が一方的にリスクを背負う悲しい結果になることが多い。自分の体は自分で守る意識を持ちパートナーに伝えるスキルを持つようになってほしい」
自覚なしに危ない立場になっていく少女が少なくない現状に、危機感を持っています。