■経営者がやりたいことを姿カタチにしていく

――コエドビールは良いものを作っているのに、土産物で一回買って帰るだけのものとしか見られていなかったと。そこを何とか変えたいという思いを具現化したということか。
エイトブランディングデザイン 西澤明洋代表:
朝霧社長にその考え方がはっきりありました。モノはとても良く、地ビールだった時代からドイツ大使館の御用達ビールに選ばれるとか、本場のビールユーザーにとても支持されていましたが、お土産ビールをやりたかったわけではないと。美味しいビールの本質をきちんと届けたいとなって、日本で初めてクラフトビールを打ち立てて宣言されたのです。クラフトビールの定義は基本的に職人がしっかりモノを作っているというところで、しっかりした良いものを届けていくのはおみやげ屋ではないわけです。販路は当然全国ですし、いまはもうコエドは世界に羽ばたいています。本来経営者なりものづくりをしている方々がやりたいことをはっきり見せていく、姿カタチにしていくのが私どもの仕事です。

――400年続いた神社の社紋まで変えたということだが。
エイトブランディングデザイン 西澤明洋代表:
そもそも警固神社は警(いまし)め守るというところに由来した神様ですので、漢字の「固」を抽象化した社紋をデザインさせてもらいました。400年ぶりに変えるということは400年後も残らなければいけないので、デザインとして普遍性のある丸と四角で。多分丸と四角を400年後の人がダサいと言わないと思うので。
――デザイナーからブランディングデザインに入っていこうと思った理由は何か。
エイトブランディングデザイン 西澤明洋代表:
もともと大学時代は建築を勉強していて、ちょうど在学中にデザイン経営というものが学問として成立し始めたのです。デザインをどう経営資源に使っていくのかという学問なのですが、そこで目覚めたというか、面白そうだと思いました。そういう専門の職域はなかったので、1回メーカーでデザイナーとして働いて、独立後はいろいろな企業と伴走する形で、デザイナーでもありますが、企画や戦略的なところもサポートするような働き方で仕事をしています。

――ブランディングデザインは単にロゴや製品のデザインをするということではないし、マーケティングディレクターとして販売促進策を考えるのでもないということか。
エイトブランディングデザイン 西澤明洋代表:
やはりデザイナーなので何かを作っているわけですが、その何かが僕の場合は経営をどうデザインするかです。ブランディングデザインをする時に企業経営の課題を「マネジメント(M)」「コンテンツ(C)」「コミュニケーション(C)」の3階層に分けて整理していきます。一般的に僕らのようなグラフィックを担当するデザイナーをイメージされるのは「コミュニケーション」の部分ですよね。
――コミュニケーションはロゴやパッケージ、広告などの形を作ったりイメージを統一したりする役割か。
エイトブランディングデザイン 西澤明洋代表:
イメージを統一するというのは非常に大事な手続きで、例えばロゴとWEBの印象が違うといったちぐはぐなことが起こってはいけないので統制を取ります。しかし、これはブランディングではなく、VIと言われるビジュアルアイデンティティを整える作業です。僕らがブランディングと呼んでいるのは、ロゴがいいから買うというようなことではなく、たとえば警固神社なら神様にお祈りをしに行くというコンテンツがあり、それに付随するプロダクトとしてお守りなどもあって、ここも一貫性が必要です。

――こういう商品、こういう会社でありたいという経営の方針があって、それがプロダクトやサービスという製品に落とし込まれて実際に消費者に伝わる形になっていくことが大事だということか。
エイトブランディングデザイン 西澤明洋代表:
まさしくその通りです。僕たちが経営をデザインする時には、コミュニケーションの階層もやるし、プロダクト、サービスもやるし、一番根っこの経営者の思いや考え方を戦略にしっかりまとめて一気通貫で縦串を通していく。MCCの縦串こそが実はブランディングデザインで、これを専門的に私どもは仕事をしています。
――ブランディングしたいという相談はどういう理由が多いのか。
エイトブランディングデザイン 西澤明洋代表:
ブランディングデザインの本を執筆したり、セミナーをやったりしているので、それらを通して経営戦略がデザインできるとか、それがコンテンツとしっかり繋がってコミュニケーションがあるということを知った経営者の方から「それは目から鱗だね」と、「面白いからのうちの会社もそれをやると立て直せるか、元気になるのか」といった形でお声がけいただくことが非常に多いです。
――いい物を作っているのに売れない、どうしたらいいかという相談はあるのか。
エイトブランディングデザイン 西澤明洋代表:
まさしくいいものを作っていて売れないと、この不況環境下で悩んでいる方が多いです。僕らにたどり着く前にだいたい販促活動などをされているわけですが、ダイナミックに会社が変わっていく感じがしないという悩みをお持ちです。やはり根っこから変えていかないと変わらないですよねというお話をさせていただきます。規模の大きい会社やBtoB(企業間取引) の会社に多いのが、数字は右肩上がりなのですが、全然世の中に知名度がないと。これはいまの時代はすごくマイナスなのです。少子高齢化の中で、ある程度数字を伸ばしている企業の課題で軒並みあるのが採用です。やはり知られていないと若い方がなかなか入って来ないという環境があるので、toBの会社であってもブランディングやデザインは必須の時代に入っていると思います。














