元少女のこれからは?

Q26歳を迎えた元少女の今後は?
森野弁護士:
「もちろん1人ではとても生きていけないと思いますので、誰かはサポートをしておられると思います。おそらく元少女を支えると言ったらおかしいですけど多少なりとも面倒を見る方が現れてその方と共に、医療的な治療が必要ということになれば精神科の病院に入るとかですね。もちろん『同意入院』という形で行かざるを得ないかと思いますが。そういう形でしか支援できないことになりますね」

「このような重大事案を犯した方は『別の人生』といったら語弊があるけど『違う人』になって社会復帰するということが望ましいというか、そういう形でしか生きていけないという風に思ったりしますね」

「別の名前を与えて社会復帰させている例があることは聞いています」

元少女は更生できるのか?発生当初から抱かれ続けてきた市民の懸念やとまどいは、法律を前に行き場をなくし、しかし色濃く沈殿しています。

森野弁護士:
「元少女がどこにいるか、どういう風にしているかが分からない…亡くなった子どもさんの家族のことを思うと…怒りなり憎しみをぶつける対象がボヤっとしてますよね。そういう状況というのは本来人間として一番苦しい、辛い状況だと思う」

同級生:
「同級生とは本当にたまに話すぐらいで…いつ出てくるんだろうねぐらいですかね。当時の心境とかも話すことはないし、触れること自体タブーみたいな所はどうしてもあるので…。若かったので、命のこととか何も考えてなかったんですけど…それをきっかけに自分の命に対しても考えるようになりました。明日死んでも後悔しないような生き方をしようって」

同様の問題を抱えた青少年が現れる可能性は…

父親の友人:
「(元少女に対して)極悪人っていうんですか…そういうイメージは私は持っていませんでしたので…」

「人間はみんな全員がもしかしたら『要素』を若干持っているのかもしれない。ほとんどの人は何も出てこないと思いますが悪い環境要因が次から次に重なって限界になった時に、こんな風な恐ろしい事件を起こしたり…。すごい低い確率でこういうことが起きるんじゃないかと思います。それをどこかで食い止めることができるか…」

2人の高校生を、被害者と加害者にしないために何ができたのだろうか?
そして、法の監視から外れ社会復帰する元少女と、どう向き合っていけばいいのだろうか?

この10年、事件自体がタブー視され、さらに法律の壁で明らかにされる事実は少なく、検証は十分になされたとは言い難い現状です。

事件から見える社会の断面に改めて目を凝らし、今とこれからを考えていく材料として、長崎家裁が出した決定要旨のほぼ全文を掲載しました。

決定要旨に用いられた「快楽殺人」という言葉には、裁判官自身の痛みや戸惑い、社会への警告、そして遺族らの行き場のない怒りも込められているのかもしれません。2015年に出された長崎家庭裁判所の決定要旨は以下の言葉で締めくくられています。

長崎家裁決定要旨より
【少女の処遇は認知などの本質的な変容を目指すもので予後の見込みは厳しいが、医療少年院で可能な限り長期間治療教育を施せば、矯正の効果は十分に期待できる。
さらに医療少年院を出た後も生涯にわたって十分な対応を継続する必要がある。今後も同様の問題を抱えた青少年が現れる可能性は否定できず、対応に取り組む体制の構築も重要だ】