■「西側諸国を中心とした世界中のメーカーの孫請け産業になりたい」

円安をチャンスととらえる中小企業がある。岡山県のあるプラスチック部品メーカーを取材した。生産したプラスチック部品は中国などに輸出していた。円安は儲かるはずだった。ところがエネルギー価格が上昇し、電気代が膨れ上がり、利益率は3分の1に…。経営は厳しかった。しかし・・・

御津電子株式会社 人見雄一代表
「アメリカの企業がウチを見つけてくれて、1年半前くらいに問い合わせをもらって取引が始まった。アメリカをはじめ西側諸国は今、日本でサプライチェーンを築こうとしています。(中略)
西側諸国に言われた部品を作って納める。そこに販路があると思っている。西側諸国を中心とした世界中のメーカーの孫請け産業になりたい。そのチャンスがこの円安で到来すると思っています」

従来、部品のサプライチェーンと言えば、人件費の安い中国が中心だった。だが、米中の対立が日本の中手企業にビジネスチャンスをもたらしていた。

経済評論家 加谷珪一氏
「アメリカにすればできるだけ中国に依存したくない。ところが中国に代わる工業部品の調達先ってなかなか見つからなかった。各国血眼になってそういう会社を探しているという状況ですので、(円安で日本が中国と競争力を持った)一部の中小企業にとっては大きなチャンスだと思います」

加谷氏の算出した人件費と為替レートの関係によれば、1ドル150円を超えると、モノづくりのコストは中国より日本が安くなるという。すると、日本が世界の工場となりうるかもしれない。しかし、経済大国と言われた国が、下請け、孫請けの国となることをどうとらえるべきか…。

経済評論家 加谷珪一氏
「モノづくりのコストが下がるということは、日本で作った方が有利ですから、アメリカなどに輸出するチャンスが増えるというメリットがあります。一方でこれは日本の価値が下がったことの裏返し。悪く言えば日本全体が貧しくなったことの裏返しです」

“モノづくりニッポンの復活”か、“日本経済の地盤沈下”か、なんだか複雑な気持ちである・・・。

(BS-TBS 『報道1930』 9月5日放送より)