観測を成功に導いたのは「イオ専用の小型望遠鏡」
ー火山が爆発を繰り返す様子を観測したことは、どのような意味がありますか。
「この小望遠鏡で、イオの火山活動の爆発が確認されたのは、初めてのことではありません。しかし、2年間に渡り、火山活動が安定せず変化し続ける様子が観測されるのは珍しいことです」
「大型の望遠鏡は、様々な観測対象に使われるため、継続的にイオを観測することは困難です。イオ専用の小型望遠鏡ならではの成果が得られました」
【画像】イオ専用の小型望遠鏡
ーイオ専用の小型望遠鏡は、どのような仕組みのものなのでしょうか。
(米田さん)
「レンズの直径が10cm程度しかありません。日本の国立天文台がハワイで運用する、すばる望遠鏡には、直径8.4mの鏡が用いられていますから、最先端の宇宙の探査に使う望遠鏡としては、最小の部類でしょう」
「しかし、イオの火山から発生したガスは広い範囲に広がり、ぼんやりしています。ですから、細かい構造を見るための性能は必要ありません。広い範囲の非常に暗いぼんやりしたものを観測するため、小さい望遠鏡を使っています。ただし、木星本体は大変明るく、観測の邪魔になっています」
「そこで、木星部分の光をブロックするマスクを備えています。また、イオの火山性ガスに含まれるナトリウムのガスは、道路にもあるナトリウムランプと同じ、オレンジ色で発光しています。余計な光を避けるため、このオレンジ色の光だけを正確に透過するフィルターを備えています。それでも木星の光は邪魔です。ですから、特殊な画像処理も必要です」
ー今回の成果を応用して、今後期待されることはありますか。
(米田さん)
「現在、NASAの探査機JUNO(ジュノー)が木星の周囲を探査しています。また、現在ESA(ヨーロッパの宇宙機関)とJAXAの共同プロジェクトである、探査機JUICEは木星に向かっている途中です」
「これら探査機は木星の周囲の環境を調査するのですが、その環境が太陽から吹き付けるプラズマの流れ、太陽風から影響を受けているのか、はたまたイオの火山から発生したガスの影響をうけているのか、探査機のデータだけではわからないこともあります。このような大掛かりなミッションを、地球にいながら小さな望遠鏡でサポートすることができます」