器の染付はパワー封入。SDGsの本質は「お天道様見てるよ」

今、たい平氏が取り組むのは粋を作り出すこと。5年ほど前から長崎県の伝統工芸である波佐見焼の窯元に通って絵付けをし、器をデザインしている。使われ続けるものを作ることで伝統的な技術を残し、未来に受け継ぎたいと言う。

スタジオで代用の紙皿に染付を再現してもらった。

林家たい平氏:
器に勢いを持ってもらいたいと思って、もう勢いで。普段染付のときには、平筆は使う人はあんまりいないんですけど、僕は技術がないので、自分のパワーをお皿の中に封入できたらいいなと思って、パワーだけ。

今いろいろ外国の安いお皿とかが手に入るので、白いお皿で食べるのも素敵ですけど、でも昔からお皿に誰かが絵を描き始める。食べ物を盛るだけだったら真っ白でいいのに誰かがあるときを書き始めた。それは多分、食べ物を食べるだけではなくて、食卓にもっと幸せが生まれるために一つ手を加えて絵を描くだけで食卓が豊かになるっていうか、楽しくなるっていうことを、ある時誰かが思いついて絵を描き始めたんだと思うんです。

だから、自分の持っているパワーをお皿に託して、食卓に元気なパワーが届けられたらいいなっていうそんな思いもあって。こうやって日本の食器を楽しんで使っていかない限り、どんどん産地が少なくなっていってしまって、最終的に職人さんがいなくなってもう一度あのお皿がほしいよねって言ったときに、もう職人さんがいませんって言って、そこからもう一度作り直そうと思ったらすごい労力ですよね。

それを食い止めるには、僕たちがこういうものを美しいとか楽しいと思って使うことによって、産地も潤っていく。だってみんなボランティアでやっているわけではないので途絶えちゃいますよね。やっぱり使うことによって、作る人も幸せになるし、使う人も幸せになるっていう共通項が生まれたら、ずっと残っていくと思うんですよね。

――実際にたい平さんが以前お作りになった器をご用意いただきました。

林家たい平氏:
笑うっていう文字です。盛ってあったら、最初はわからない。笑うって書いてあるって言ってみんなでワーッて笑える。子どもたちが、「お母さん、焼きそばを笑うっていうお皿に盛ってよ」とか。そういうお皿を楽しむ心が子どもたちに。

下手くそなりに勢いですね、勢い。食べ物の持っている勢いプラス器の持っている勢いっていうのを一緒に食べる、取り込む。いろんな産地があって、いろんな素敵な器、お皿がたくさん日本にはありますから。

やっぱり親、大人だと思うんです。同じお料理を真っ白なお皿とこっちの焼き物のお皿に盛り付けたらこんなに違うよとか、実体験で経験することによって、自分の中で取捨選択が広がって、こっちの方が素敵だなって思う。それがこうやって古い伝統的ないいものを守っていく僕たちの使命かなって思うんですよね。

――今日はたくさんお話を伺いました。

林家たい平氏:
お二人と喋ることによって自分の中が整理できたっていうか。SDGsって何?って言われたときに、なんかもっと僕たちに感じやすい、心に響く言葉が生まれたらいいのになと思いながら。

僕はよく「お天道様見てるよ」って言われたんですね。悪いことをしても何をしても「お天道様見てるよ」って。そのことで、自分がやっていることがいいことなのか悪いことなのか、お天道様に聞いて行動する。そういうことが多分SDGsの中に本質としてあるんじゃないかなって、今日も考えました。

(BS-TBS「Style2030賢者が映す未来」2024年9月15日放送より)