SDGs達成期限の2030年に向けた新たな価値観、生き方を語る今回の賢者は落語家の林家たい平氏。2006年からは人気番組「笑点」のメンバーとしても活躍。美術大学出身という経歴を持ち、センスあふれる美術作品を生み出すほか、日本の伝統を受け継ぐ活動も続けている林家たい平氏に、2030年に向けた新たな視点、生き方のヒントを聞く。
【前編・後編の後編】
粋=「かっこいい」は暮らしの中で作り出す
――続いてお話いただくテーマですが、たい平さん、何番でしょうか?

林家たい平氏:
12番の「つくる責任 つかう責任」です。
――実現に向けた提言をお願いします。
林家たい平氏:
「『粋』をつくる、つかう、受け継ぐ」。
――何をすれば粋になるんだろう。そこから教えてください。
林家たい平氏:
粋っていうとすごく抽象的なので、もっとわかりやすく言うと、周りから見ていて「かっこいいな」って思うこと。
――どうすれば周りから見て「かっこいい」となるんでしょう。
林家たい平氏:
ある意味、内面が自分の中に備わっていることが大切で。この夏もあまりにも暑かったので、ハンディファンっていうんですか、あれを皆さん持っていたじゃないですか。すごく便利で動力は電気だし、自分では動かなくていい。実際使ってみるとすごく涼しい。

だけど、もう一つ、昔からのものって言ったら、僕たちが扇子を持っていますけど、扇子であおぐって労力は自力ですから、電気も使わない。僕はそれほど涼しくはないんですけど、周りの人がめちゃくちゃ涼しそうに感じるじゃないですか。
袖から風を入れていたりするのを見た瞬間にかっこいいと思わせるお手本が、街の至るところではないけれども、そういうものを目撃する場面を僕たちが作らなければいけない。内ポケットからおじさんが扇子を出してきて、「いやあ、今日は暑いね」なんて言っているだけで、なんか暑さもいいなって、ちょっとどっかで思っちゃうぐらいね。それが一つ、今年の夏に思ったことっていうんですかね。
――私達も粋に気づく感性を持っていたいですよね。
林家たい平氏:
SDGs的に言うと、モノを僕たちが使う、買って、作ってくれている人たちを応援するっていうことも必要だったりして、昔の人のほうがSDGsなんて言葉はないけど、すごく素敵なデザインを暮らしの中で作り出しているんですよ。