政策で波紋 “乱立” 自民総裁選
膳場貴子キャスター:
与野党それぞれのリーダー選びが進んでいますが、この1週間の動きです。

駒田健吾キャスター:
まず、自民党総裁選。議論を呼ぶ政策がいくつか出てきました。石破元幹事長が表明したのが、「金融所得課税の強化」です。これは株の売却益などへの税率を引き上げ、富裕層への課税を強化しようというものですが、岸田総理が前回の総裁選で打ち出すも党内の反発などを受けて先送りした経緯があります。
そして茂木幹事長が突然表明したのが、「増税ゼロ」です。岸田政権で決めた防衛増税と子育て支援のための保険料値上げを停止するというものです。さらに、政策活動費の廃止も打ち出しました。党から受け取り、使い道を明らかにしなくても良い政策活動費ですが、自身が幹事長として年間およそ10億円を受け取り、ついこの間まで野党が廃止を求めても拒否していた経緯があります。
そして小泉氏が決着をつけるというのが「夫婦別姓」です。党内に反対が根強く、一筋縄ではいかない案件です。

駒田キャスター:
一方、立憲民主党の代表選が7日告示されました。枝野元官房長官、野田元総理に続き、泉現代表、さらに当選1回の吉田晴美衆院議員も名乗りを上げました。泉代表は「自民党の裏金問題は大規模で明確なルール違反。レッドカードで一旦退場させなければ、正義の通じる国にならない」と政権交代を訴えています。
膳場キャスター:
政策論争を期待したいところです。

寺島実郎さん:
これは与野党を超えて、日本を担うリーダーを自負する人たちは、自問自答をしてくれないと困ります。21世紀の日本を一体どういう国にしたいのかと。リーダーに必要なのは構想力なんです。どういう構想を持って日本を引っ張ろうとしているのか。わかりやすく、テーマを二つに絞って言います。
外交や国際関係について、東アジアの平和構築に対して、日本が一体どうやって主体的に関わる構想を持っているのか。わかりやすい質問で言うと、2045年には日本が戦争に負けて100年になる中で、「100年経っても、日本に米軍基地は今のままあるのですか」という質問に対してどう答えるのかです。
それから経済産業政策について、アベノミクスをもって日本をインフレ化して浮上させようと、過剰なまでの金融政策に依存して日本を引っ張るという政策を展開してきたことが、円安や今の日本の埋没に繋がってると僕は思うのですが、「一体どういう理由で、日本が埋没したと思いますか」と「日本を今後浮上させるとしたら、どういう産業経済政策を軸にしますか」という質問です。
そういう質問を本質的に問いかけて、この人たちが持ってる構想力と実力をチェックする必要があるというのが、国民目線で総裁選に向き合うときの大事なポイントだと思います。

弁護士 三輪記子さん
自民党の総裁選を見ていると、なぜ今までやらなかったのですかということを皆さん仰っていて、しかも仰られていることは過去に野党が指摘していたことであり、野党の指摘は正しかったことを実質的に認めていらっしゃる方がたくさんいるなと。なぜ自民党なのかということを問うべきだと思います。できるのかできないのか分からない、野党がずっと「やってくれ」と主張していたことを今さら「やる」と言って、総裁選を戦う。誰のためにやっているのかということにすごく疑問を持っています。さらに言うと、裏金問題はもちろん、裏金よりも前に出てきた問題として「統一教会問題」もうやむやにしてるなと思います。リーダーとしてどういうふうにやっていくのかということを明らかにするべき中、そこが見えてこないなと。
膳場キャスター
このリーダー選びのどこに注目していらっしゃいますか。

社会起業家 中村多伽さん
人気取りのために近視眼的になりがちだと思っていて、根本的にこれからの日本を考えたとき、どれくらい経済を強化していくのか、どれくらい暮らしやすい国にしていくのかということが重要だと思っています。
一つの論点として「金融所得課税」について、富裕層に対する課税の強化という見方をしていらっしゃると思うのですが、基本的には株式投資は資産形成の手段としてどんどん民主化されていく中で、規制というのはかなり冷水になると思っています。お金を増やす手段としての投資だけではなく、投資したお金はどこにいくのか。新しい産業、例えば日本だとiPS細胞やバイオ創薬の領域、社会課題解決など、まだまだ強化していかなければならない領域がある中で、そこに対する投資予算が減っていくというのは、根本的に国力の増強を妨げるものになりうると思うので、もう少し大局観を見て政策提言してほしいと思っています。

「報道1930」キャスター編集長 松原耕二さん
自民党は、金権批判があったら田中角栄さんから真逆のクリーンな三木武夫さんに交代したり、あるいは森喜朗さんが人気ないと小泉純一郎さんに交代するという、党内の疑似政権交代と言われるものを繰り返してきました。それは政権を維持するためであり、今回はそれを再現しているように見えます。候補者たちは言葉では「新しい政治」と言ったり、政治と金の問題で政策を打ち出しているけど、それは刷新感、刷新感の「感」であり、本当にできるのか、なぜ今までやらなかったのかと。夫婦別姓の問題でも、これまでにやるべきであった政策を今、言葉で「やる」と言って信を問うのではなく、やってから信を問うべきだというふうに思います。
解散についても言っておきたいのは、私は好きなときに総理が解散できるというのは憲法解釈上、おかしいと今でも思ってます。いずれにしても、政権維持のためのあらゆる装置を駆使しようとしていることを有権者がどう判断するのか。立憲民主党についても、女性候補を立てるまでのギリギリぶりを見ていると、この党はいざというときに本当にまとまれるんだろうかと。旧民主党政権時代以来、抱えているこの課題を本当に払拭できるのかと。ここもまた、有権者はしっかりと見ていると私は思います。
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<プロフィール>
三輪記子さん
弁護士 離婚問題などの男女トラブルやハラスメント問題を手がける
中村多伽さん
社会起業家 貧困や気候変動など
社会課題の解決に特化した投資ファンドを運営














