消費支出は依然、低調

では、消費はどうでしょうか。

総務省が6日発表した7月の家計調査によれば、2人以上世帯の消費支出は、物価変動を除いた実質で前年同月比0.1%増と3か月ぶりにプラスに転じました。

もっとも、プラス幅はわずかで、住宅関連の支出が強めに出たという特殊な要因が大きいと見られます。

消費支出の3割を占める食料は実質1.7%減で、家計の財布の紐は、依然として堅いままであることが見てとれます。

家計調査には賃上げの恩恵が薄い年金世帯などが含まれているので、ここで勤労者世帯に限ってみてみましょう。勤労者世帯の7月の実質消費支出は1.2%もの減少です。

実は勤労者世帯の実収入は、賃上げやボーナスの効果から実質で前年同月比5.5%も増加しています。

可処分所得は定率減税の効果も加わって、7.3もの%増加と、いずれも「歴史的」と言って良い高い伸びを記録しました。

実収入や可処分所得の、これだけ高い伸びは、驚きに値しますが、それでも消費支出がマイナス1.2%と言うのは、それ以上に驚きです。

2年以上続いている高い物価上昇と将来不安が、いかに消費マインドを委縮させたかを物語っています。

企業の内部留保は初の600兆円超え

やるべきことは明白です。当面、物価対策や所得支援を続ける一方で、来年も今年並みの賃上げを続けることに尽きます。

財務省が2日発表した法人企業統計によれば、企業の利益から税金や配当を差し引いた「内部留保(利益剰余金)」は、2023年度末で、初めて600兆円を超えました。

2016年度に400兆円を突破してから、わずか7年で企業の内部留保は1.5倍にも膨れ上がっています。

23年度は人件費が3.4%、設備投資も5%と、増えてはいるのですが、円安の進展などで、利益はそれを遥かに上回る増加ぶりです。

言い換えれば、まだまだ賃上げも投資も足りないのです。

総裁選、総選挙で経済対策の論戦を

物価と賃金の「好循環」を実現し、それを需要増がけん引する経済成長につなげていくという難しい作業には、細心の政策運営が必要です。

千載一遇のチャンスを逃さないよう、自民党総裁選挙や、それに続く総選挙を通じた経済対策へのの論戦が、大いに期待される所以です。

播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)