(本記事は、沖縄県立コザ高校・空手部主将Aさんの自死問題を長期取材したドキュメンタリー番組「我が子を亡くすということ」を再構成したシリーズの第2回です。第1回記事からの全編はこちら。完結まで土曜更新)

【第1回】理不尽な部活指導で命を絶った我が子はなぜ「生徒A」になったのか…
【第2回】熱中症で倒れ「演技だ」とビンタ…「何のための部活か」他県の遺族と出会い感じた“伝える使命”
【第3回】部活動顧問から暴力を振るわれた末の死… 再発防止に取り組み続ける高校
【第4回】部活顧問が生徒に投げつけた「キモい、ウザい」…空手部主将の自死につながった不適切な指導を根絶するには
【第5回】母の決意「息子と同じ苦しみを、これ以上誰にもさせない」

生徒「Aさん」が亡くなって2年半が経ち、Aさんの父さとしさんと、母みかさん(いずれも仮名)は、似た境遇にある親たちの会、「全国学校事故・事件を語る会」に参加するため神戸へ向かった。

Aさんの母みかさんは「語る会」参加のため神戸へ(2023年)


▽部活中に息子が熱中症で死亡した父親
「右手がけいれん、目が開いたまま、死戦期呼吸(生命に危険がある状態での呼吸)、寝転がった息子はこんな状態でした。「はーーー、はーーーー…」

▽いじめ被害にあった当事者の妹
「2階から飛び降りようとする兄の能面のような感情のない顔や、まとう空気がとても恐ろしく、兄の体を引く母の体を引くことしかできませんでした。あのときの、4人家族が3人家族になるかもしれないという恐怖は今もよく思い出します」

「語る会」では死亡事案やいじめ被害などの体験を遺族らが語った

2003年兵庫県で発足した「全国学校事故・事件を語る会」。

学校でのいじめや事故、教員のパワハラなどによって子どもを亡くした全国の遺族らが集まる集会は、これまで100回以上開かれている。

▽自死した生徒Aさんの母・みかさん
「ここに来ないと得られない情報があるので、(息子のために)できなかったこともしっかり振り返りながら、いろんな方の知恵やアドバイスをもらって」
「 (亡くなった)息子に会う時に、よく頑張ったねって言ってくれるような、親としてはそれぐらいしかできないので」

「全国学校事故・事件を語る会」に参加した両親

当時、Aさんの自死については再調査が始まっていたものの、遺族として今後何をするべきか、全てが手探りの状態。

全国の遺族がそれぞれの悩みを語り、対応策を相談しあう貴重な場所でもある「語る会」で、みかさんたちは、我が子を亡くした痛みにあえぎ、それでも闘ってきた遺族たちの助言に耳を傾けた。

(シリーズ「我が子を亡くすということ」を第1回記事から読む)