■NY市場参加者に聞くFRB議長講演のポイント


ーーパウエル議長発言の受け止めは?

ホリコ・キャピタル・マネジメント 堀古英司氏:
予想通りだったのは、徹底的にインフレと戦う姿勢を示したことです。特に「フォースフリー(Forcefully)」=「力強く」金融政策の手段を使うという言葉が印象的でした。一方で予想外だったのは、金融を引き締めすぎると必ず景気に影響が出てくるのですが、こちらに対する配慮が全くない内容だったということです。家計や企業を犠牲にしてでもやると。


ーーこの1カ月ほどはインフレのピークアウトかということで市場は回復基調になっていた。

ホリコ・キャピタル・マネジメント 堀古英司氏:
インフレのピークはもう過ぎたと思います。ジャクソンホール講演の直前に発表されたインフレ指標が前年比は高いのですが、前月比は年率にすると1%にすぎないのです。ただ、落ち着き始めたところで人々がまだインフレがあると思うとインフレを抑えられなくなるので、こういう発言をして抑えようという意図のスピーチだったと思います。


ーー今後9月の利上げは0.75%か0.5%、どちらになりそうか。来年には利下げもという観測もあるが、それは遠いというのが今回のスピーチの実感ではないか。

ホリコ・キャピタル・マネジメント 堀古英司氏:
9月は0.5%だと思っていますが、いずれにしろ年内あと1%ぐらい利上げして今回の利上げ局面は終了になるのではないかと思っています。今回問題だと思うのは、インフレ期待もそうなのですが、景気に対する期待です。人々が景気が悪くなると思うとそれが消費や投資を控える要因になってしまって、余計に景気を悪くするという部分もあるので、これがスパイラル的に行き過ぎるとちょっとまずいことになるかなと思いました。


ーー今後の金融政策を占っていく上で一番注目しているポイントはインフレ率かあるいは長期金利か?

ホリコ・キャピタル・マネジメント 堀古英司氏:
インフレ自体は経済活動からくるものなので、コントロールは政策金利でやるしかないのですが、このバランスですよね。今回のような発言さえやってくれれば長期金利は抑えられるので、これは中長期的に株式にとって良いことだと思います。ただ銘柄の中には景気に敏感なものもあって、これは売られますし、なんといっても今年の上半期は株式も債権もひどい相場でしたので、投資家心理が痛んでいます。ですので、こういうちょっとした引き締めの発言に敏感に反応しやすい状況がまだ続いているということだと思います。

ーーもう相場的には大底を打って、トンネルの光が少し見え始めたということなのか。

ホリコ・キャピタル・マネジメント 堀古英司氏:
今年一番厄介だったのはインフレ率がどこまで上がるか分からない、そうなると長期金利もどこまで上がるかわからないということでした。ただここにきて、インフレのピークアウトは見えてきたし、長期金利は問題だった上昇のペースがここに来て鈍化するとわかってきたので、もうここからは買っていい下げだと思っています。