“「ボス」と「リーダー」は違います”
長年、アフリカでゴリラと暮らすなどして、その生態を研究してきた山極さん。ゴリラの世界には、猿山の“ボス”とは違う、“リーダー”がいると言います。

山極壽一所長(総合地球環境学研究所)
「ゴリラというのは、仲間から信頼されて、慕われて『リーダー』になる。これは民主主義ですよね。だけど、ニホンザルが典型なんだけど、力の強いものが『ボス』になる。ボスは他を制圧する。
ボスが制圧する社会っていうのは専制主義と言い換えても良い。この違いなんだよね。今の民主主義社会で必要なのは、ボスではなくてリーダーを作るべきだろうと」

仲間の信頼に支えられるリーダーと、力で押さえつけるボス。ところが、今の世界は『リーダー』不在の一方、力を誇示する『ボス』のような政治家や政党が、幅を利かすようになったといいます。
ロシアのプーチン大統領や、中国の習近平国家主席などは、依然として独裁的な権力を振るっています。
一方、西側諸国では、欧州議会の選挙で極右勢力が台頭。アメリカ大統領選では、強権的なトランプ氏が支持を集めるなど、民主主義の後退が言われています。
ゴリラの背中の意味
山極さんはこうした世界の状況を踏まえ、これからの政治に求められるものとして、次のように語りました。

山極壽一所長(総合地球環境学研究所)
「ゴリラは言葉を持っていないから、立ち居振る舞いが重要。成熟すると背中が真っ白な毛に変わる。リーダーは背中を見せて決して振り向かない。『見ていないけど、ちゃんと分かっているよ』ということなんですよね。背中は威厳を示すと同時に許容力も示している。
『何かあったら全責任を負うよ』と。だからみんなが、その白い背中を指標にしてついていく。それが政治家の、しかもトップの態度ですよね。それを示しきれてないっていうのが、背中を見せていない政治家たちの失敗なんです」
「背中で語る」ゴリラのリーダー。そうしたリーダーは、人間の世界にも現れるのでしょうか?
「サンデーモーニング」2024年8月25日放送より)