絶対に起こしてはならないゾウとのトラブル

野生のアジアゾウが生息する密林を切り開いて建設し「一帯一路」構想をだれにもわかるカタチにした中国ラオス鉄道。その「一帯一路」構想に対し、警戒感を強める国々は少なくない。一方、ゾウはだれからも愛される動物だ。

だから、西側諸国から「開発を最優先して、絶滅危惧種のゾウの生態系を犠牲にしてまで、中国が周辺国への経済支配を進めている」――。そう非難されないように、保護も一生懸命やっているのだ。国営メディアを使って、しっかりアピールしないといけない。鳴り物入りで開業した中国-ラオス鉄道と、野生のゾウが関係するトラブルは、絶対に起こしてはいけないわけだ。

ただ、野生のゾウの活動は、当初の想定の範囲を超えているのかもしれない。記憶にあるだろうか。2021年、やはり中国の雲南省で、アジアゾウ15頭の群れが、500キロも移動してニュースになった。

森林を離れ、人が住む村にも入り、家の中に長い鼻を突っ込んだりしたりもした。食べ物が欲しかったのだろうか。「ゾウの大行進」の原因はわかっていないが、生息できる森林がだんだん狭くなっていることに対し、ゾウたちが抗議デモを行っているようにも思えた。

8月12日は「世界ゾウの日(World Elephant Day)」。世界が一緒になって、ゾウの保全を考えようという日だ。世界自然保護基金(WWF)によると、絶滅の危機にあるゾウに心を寄せる人たちが2012年に、この日を制定した。毎年、8月12日にはゾウに関連したイベントが世界各地で行われる。

中国は今後、どのように対策を練っていくのか。中国にとって、ゾウは「一帯一路」構想の「思いがけない難敵」になるのだろうか。

◎飯田和郎(いいだ・かずお)

1960年生まれ。毎日新聞社で記者生活をスタートし佐賀、福岡両県での勤務を経て外信部へ。北京に計2回7年間、台北に3年間、特派員として駐在した。RKB毎日放送移籍後は報道局長、解説委員長などを歴任した。