「今世紀末、2メートルぐらい(海面上昇が)ある」

“ティッピングポイント”という言葉がある。ファッションなどの分野では、ある時点を突破すると一気にトレンドとなるといったポジティブな意味で使われるが、環境の分野では“転換点”“臨界点”と訳され平均気温の上昇があるレベルを超えると様々な自然現象が制御不能になるという危険なポイントだ。

一説には産業革命時の平均気温を1.5度上回った時を指すという。2023年の世界の平均気温は産業革命時より1.48度高かった。つまり地球環境のティッピングポイントはもうすぐだ。南極の氷が急速に溶け始めていることは、その象徴といわれている。

40年以上南極の氷河を研究するカリフォルニア大学アーバイン校のルグノット教授は南極の氷河が年間最大2キロも後退していることを観測、「これは最も急速な後退速度である」と語った。

江守教授は既にティッピングポイントに達しているとは思わないが、南極の氷床の溶解は深刻だと話す。

東京大学未来ビジョン研究センター 江守正多 教授
「(今のペースで南極の氷が解けると)今世紀末、2メートルぐらい(海面上昇が)ある…。沿岸の低い土地は(水没する)、サンゴ礁でできた小さい島は標高2メートルなんてところがありますから…」

ティッピングポイントは南極の氷の問題だけでなく、様々な自然現象に後戻りできない変化をもたらす。

東京大学大学院 斎藤幸平 准教授
「(ティッピングポイントが来れば)我々が今見ている気候変動よりも(様々な場面で)一気に悪化する可能性がある。例えば農作物も、何年もかけて品種改良してなんとか(環境に)適応させてきたのにできなくなってしまう。(環境変化が激しすぎて)追いつかなくなってしまう。とくに日本のように資源がなくて食料自給率が低い国は本当大変。飢えるとか…そういうことが決して誇張ではない事態に向かっているんじゃないか…」

夢のような解決策は見つかりそうもない。
一人一人が環境に意識を持つことから始めるしかないのかもしれない。

(BS-TBS『報道1930』8月8日放送より)