クリエイティブな仕事に触れ看護師からCRCに 

——後藤さんがご自身のキャリアの中でCRCを選んだきっかけは何だったのでしょうか?

看護師として最初に働いた病棟が精神科病棟だったのですが、幻覚や妄想などに悩まされているような重症な患者さんが入院され薬を飲んで自分らしさを取り戻して落ち着いていくところを見て、薬の力を間近に感じていました。

ちょうどその頃病棟で治験が始まって、私たち看護師にCRCの方が「このタイミングでこの採血をしてください」「この時間にこうチェックをして体の状態に問題ないか見てください」など、いろいろ指示を出してくださっていました。1人の患者さんをめぐって、看護師や薬剤部や医師などいろいろな人たちをつないでコーディネートしている姿を見て、とてもクリエイティブですごい仕事だなと感じて、CRCになりたいと思いました。

——後藤さんがCRCとして天城雪彦(演・二宮和也)のように「変えられない自分のスタイル」としてこだわりを持っていることはありますか?

CRCとして働く中で、患者さんがどう思っているのか、理解して、納得した上で治験に参加するというところを、やはりとても大事にしています。

例えば説明を聞いて「AとBとCという治療法があります。その一つは治験です。どれにしますか?」と言われても、どれがいいのか判断できないというときに、適切な判断ができるように、適確な情報をできるだけ伝えて、その情報を元に自分で選べるようにしていただきたい。ただ選んでくださいと言うと無責任だと思うのですが、選べるように患者さんに必要な知識や情報を伝えて、情報量がありすぎても混乱するだけなので、それも含めて的確に伝えてあげる必要があります。

その結果、患者さんご自身の力で選んで、納得して進めることが大事だと思います。治験に参加してくださる方と製薬会社、医療機関の医師との間に立つような役回りの中で、患者さんの思いを大事にすること、うまく間に入りながら患者さんの意思を尊重して対応することを、一番大事にしています。

ドラマを見て「CRCになりたい人が増えれば」

——CRCの第一人者として、本作をどのように見られていますか?

治験は、薬の開発などで医療を新しい方向に進めていくものなので、新しい、明るい未来が見て取れる番組は素晴らしいと思っています。『ブラックペアン』の中でもいろいろなキャラクターがいて、最終的には患者さんの明るい未来に向かっているのを見て、とてもうれしい気持ちです。見ていてもすごく面白いですし、CRCについても「なりたい」と思ってくださる方が増えるといいなと思っています。

ドラマの中では田中みな実さん(椎野美咲役)がCRCを演じていらっしゃいますが、教授にも頼りにされていて、すごくコミュニケーション能力が高いですよね。治験薬を使いながらの公開オペのシーンでは、裏では私たちのようなCRCが一生懸命動いているなと思ったり、これは実際にもあり得るねと話したり、CRCだから分かることもあり、楽しいです。