新型コロナの第7波の収束が見えない状況ですが、その一方で、今なお「第6波」の苦しみが続いている人もいます。それは「後遺症」に悩む人。ある後遺症外来では、今も、毎週新規で10名、通院中の方が2~30名はいるということですが、その症状も変わってきていて、深刻なものが出てきたそうです。
特に深刻なのが「ブレーンフォグ」。ブレーン=脳に、フォグ=霧がかかったような感じだということですが、どんなものなのか、取材しました。
■さっき話したことも忘れるブレーンフォグ
まずは詳しい話を、札幌にある勤医協札幌病院の院長、尾形和泰さんに伺いました。

――どんな症状なのでしょうか?
勤医協札幌病院 院長 尾形和泰さん
「記憶力の障害ですね、ちょっとしたことを忘れてしまうとか。営業職の方で、営業先で話したことを思い出せない。高校生ですと、友達と遊んだんだけど、誰と遊んだ思い出せない。病院のスタッフでは、患者さんの病室に行ってお話を聞いてくるんだけど、ナースステーションに戻ってくると、話の内容忘れてしまうと」
――記憶力に問題があると色々な影響が出そうでね
勤医協札幌病院 院長 尾形和泰さん
「そうですね。2つのことが同時にできなくなるっていうふうに表現する方が多いと思います。職場で2つ3つの仕事を同時にやりながらっていうこと、あると思います。この3つを午前中に並行して仕上げるとかですね。それができないっていうことです」
――職場から休むことを勧められそうですね
勤医協札幌病院 院長 尾形和泰さん
「ブレーンフォグは休みにくいという面もあります。倦怠感が強い場合は、結構、休むっていうことに対して理解して頂けるんですけども、ブレーンフォグは、周りからはわかりにくいので、なかなか職場の理解を得るのに苦労します。コロナ治ったんだから頑張ろうとか、しっかりしろとか、そういう風に言われてしまう」
第5波までは、ウイルスの特性もあって、肺など呼吸器官、それから味覚・嗅覚の後遺症も多かったのですが、第6波(オミクロン)では、呼吸器系より、このブレーンフォグの症状の方が増えているそうです。
お話にあった通り、とても辛い後遺症なのですが、この後遺症で問題なのは、周りの理解が得られにくいということです。
すぐに息切れするとか、体に影響が出るのなら、「大変だね、休んだほうがいいよ」となりますが、この場合、「なに怠けているのか?」「しっかり仕事しろ」ともなりかねません。
■4分の3が復職できていない辛さ
また、職場の理解が得られて、休むことができたとしても、後遺症が長引いて、復職するのが困難ということもあるようです。
ソーシャルワーカーとして後遺症の患者さんを支援している聖マリアンナ医科大学病院の桑島規夫さんに伺いました。

――後遺症の方々の復職状況は?
聖マリアンナ医科大学病院 ソーシャルワーカー 桑島規夫さん
「病院のソーシャルワーカー関わった4分の1は復職できていますが、4分の3は復職ができていないっていうデータが出ています。半年程度経たないと、復職できないっていう方が多数いるということになると思います」
――半年もとなると、暮らしも大変ですね
聖マリアンナ医科大学病院 ソーシャルワーカー 桑島規夫さん
「会社を休むとなると、所得がどうなるかということがありますので、ソーシャルワーカーが場合によっては支援ということを行ったりします。制度としては、休職ではなく退職されたなら雇用保険。職務中の感染なら労災保険。また、医療保険による傷病手当金という制度もあります。あとあまり知られてないですが、傷病手当金というのは国民健康保険にはない制度だったんですが、コロナの対策として、国民健康保険でもらえる場合があります」
――色々あるのですが、難しそうですね
聖マリアンナ医科大学病院 ソーシャルワーカー 桑島規夫さん
「確かに、的確に活用するのが必要ですが、受けられる支援によって、窓口が市役所や、社会福祉協議会、労災職業センター、産業保健総合支援センターなど、バラバラで、個人でやるのは大変で、ここは課題だと思います。大きな病院の場合は、医療スタッフとしてソーシャルワーカーがいるので相談できます。ただ、そうでない場合、街のクリニックなどでは、難しいですね」
せっかくの制度ですが、1つの窓口に集まっているわけではないですし、また辛い中で難しい書類を書くのも大変です。病床がたくさんある病院などでは、桑島さんのようなソーシャルワーカーがいるので、ぜひ相談してみてください。