■壮絶な夜を振り返る

経験のない大雨だった。

7月25日、山形県内は記録的な大雨に襲われ、庄内地方と最上地方のいたるところで道路が冠水、住宅などが浸水するなどの被害が出始めていた。

佐藤警部と玉谷警部補は、2人でパトカーに乗り、新庄警察署の管内を流動警戒、つまりパトロールしていた。

そんな中、午後11時23分、1本の110番通報が入る。

一般の人からの救助要請だった。

警察署から連絡を受け現場に急行したのが、佐藤警部と玉谷警部補の乗るパトカーだった。

パトカーは先発する。

現場は、浸水が想定される地域。

警察の規定にはなかったが、ライフジャケットが必要だと考え、署はライフジャケットを積んだ車両、ワンボックスタイプの事故処理車など複数台を後続車両として現場に向かわせることにした。