がん手術を「失敗させない」AI
さらに「がん手術の失敗を防ぐ」ことにもAIが活用されています。

国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)。
小さな穴から、カメラや器具を通し、体内を写した拡大画面を見ながら行う大腸がんの腹腔鏡手術が行われていました。

医師が見ているモニターには、手術を行っている臓器が映し出されていますが、その臓器の一部が水色で表示されています。

切ってしまうと身体機能に障害が出る可能性もあります。
さらに、傷つけてはいけない「尿管」は緑色で表示され、医師が一つ一つ画面で確認しながら手術を進めていました。

そう、AIがリアルタイムで、今手術をしている臓器の神経や血管、尿管などに色を付けて表示しているんです。
『国立がん研究センター東病院』大腸外科医長・塚田祐一郎医師:
「大事な臓器を守りながら手術をする。若い医師は手術の経験不足で、
臓器の認識ができなかったりすることもあるので、AIが手術のサポートになる」
院内には、全国の病院から集めた4000例以上の腹腔鏡手術の動画があり、その一つ一つに、「切ってはいけない部分」を人の手で青や緑に塗っていきます。


専門のスタッフが、医師のチェックを受けながら、1人1日30本ほどの動画に塗り絵。
これをAIに学習させるのです。
医師がモニターを見て「神経」に気づくより、AIの方が圧倒的に早く色で表示するといいますが、あくまで最終判断は医師がするのが鉄則だといいます。

『国立がん研究センター東病院』副院長・伊藤雅昭医師:
「AIが100点の情報を提示してくれることはない。AIの情報に『正解』『不正解』と従うのではなく、AIの有益な情報に基づいて最終的に人が判断する」
今後は大腸がん以外のがん手術にも応用できるよう、研究が進められています。