「自分のことが一番信用できない」若年性アルツハイマー病と闘う女性の日常

 大阪市内でひとり暮らしをする美香さん、59歳。若年性アルツハイマー型認知症の患者です。症状はまだ軽度ですが、聞いたことややったことを忘れるなどの記憶障害があります。取材した日、近所の店に弁当を買いに行きますが…

 (美香さん)「ごめんなさい。ちょっと待って」

 通い慣れた道のはずが行き方がわからなくなってしまいました。
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 (美香さん)「どうやって行ってたかな。忘れた。やばい」

 このように突発的に記憶が飛ぶこともあります。無事店にたどり着き、弁当を買うことができました。しかし、自宅に帰ってから様子が落ち着きません。
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 (美香さん)「お弁当どこやったっけ。お弁当どこいったっけな。玄関かな」
 (記者)「美香さん、これだと思います。あの白い袋」
 (美香さん)「お弁当はお弁当としてあると思っていたら大間違いなのね。袋に入ってたんか…」

 記憶障害だけでなく、空間や物を認識する力も衰えてきています。
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 (美香さん)「お茶あったかな。きのうのかな?わからない…。うわ、どうしよう…」
 (記者)「お茶ですか?」
 (美香さん)「うん」
 (記者)「それごま油です」
 (美香さん)「ごま油!?やばい~めちゃめちゃやばい。本気でお茶やと思ってた」

 病気の診断を受けた5年前から症状は少しずつ進行していて、1人で食事をするのも難しくなってきました。好きだったカラオケからも足が遠のき、塞ぎこむようになりました。
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 (美香さん)「『覚えてる歌ばっかり歌ったらいいやん、行こうや』と言われても、気分がすごくどよどよになってしまって。自分のことが一番信用できないし、だから他の人たちのことも100%信用できないようになってきているのがちょっと最悪やなって」