ニューヨーク市場関係者に聞く「トランプ・トレード」
大統領選挙で勢いを増しているトランプ前大統領。市場はどのように受け止めているのか。ニューヨークに拠点を置くヘッジファンド、ホリコ・キャピタル・マネジメントの堀古英司さんに話を聞いた。
――トランプ大統領誕生の確率を市場はどう見ているか?そしてどんなトランプ・トレードがあったか。

ホリコ・キャピタル・マネジメント 堀古英司氏:
私は2024年初めからトランプ氏でほぼ確実だろうと見ていた。テレビ討論会でバイデン大統領の衰えが顕在化したこと、そして決定的だったのは先週の暗殺未遂事件。これで今週市場は、一貫してトランプ大統領返り咲きを見込んだ取引となった。具体的にはトランプ氏は減税を主張しているので、財政赤字が減りにくくなり、長期金利は下がりにくくなると。
一方でインフレが収まってくるので、短期金利はトランプ氏でなくても下がっていくと。

ホリコ・キャピタル・マネジメント 堀古英司氏:
そうするとここ2年ぐらい続いた長短金利の逆転が解消して、銀行にとっては非常に収益的に有利になるので、今週銀行のセクターが一番上がっている。あと(トランプ氏の)コメントにあったエネルギーセクターも上がった。それからヘルスケア関係。民主党政権の中では比較的不利といわれているので、トランプ氏だったら有利だろうということで、この辺のセクターが買われてるという状況だ。
――トランプ氏は大減税をやると言ってる。そうなるとインフレが再燃しないか?
ホリコ・キャピタル・マネジメント 堀古英司氏:
インフレはそもそもコロナ禍がもたらしたもので、コロナが去った今は、品目別にみれば明らかだが、例えば住宅の建設が追いつかなくて上がったり、自動車の生産が追いつかなくて中古車が上がったり、その副作用として自動車保険の保険料も上がった。明らかにコロナ禍がもたらしたものだったので、今全部落ち着きつつある。なのでトランプ氏が減税をやろうがやらまいがインフレも収まると思う。
――通商面では一律関税を課すとか、対中貿易のデカップリングを図るなど、かなり強硬な姿勢が目立つが、懸念は?
ホリコ・キャピタル・マネジメント 堀古英司氏:
ここが懸念しているところだ。今週、半導体やハイテクが売られているが、今先端半導体の9割以上が台湾で生産されている。なぜ台湾かというと製造コストが安い。トランプ氏がいう通り、台湾でなくてアメリカに持ってくるとなると相当コスト上がる。いまAI産業はものすごく期待されていて、その中でも半導体が一番需要があり、株式市場を支える要因だが、このコストが大幅に上がると、今週マーケットが反応したように、ハイテクや半導体には不利になる。ただトランプ氏は先端半導体の重要性を知っているのか分からないので、時間が経ってみないと分からない気がする。
――2016年、前回大統領に当選したときは、当選直後から「トランプ・ラリー」ということで株価が猛烈に上がり、今回もそれを夢見ている人が多いと思うが、どういう展開になるか。

ホリコ・キャピタル・マネジメント 堀古英司氏:
前回はまさしく「もしトラ」が現実になったサプライズ。トランプ・ラリーといわれた上昇だったが、市場関係者は今回、比較的早くからトランプ氏の可能性を見込んでいて、今はもうほぼ確実だと思っている。とはいえ大統領選なので、結果は開けてみないと分からないが前回よりは不透明要因は少なく、選挙までに織り込み分の方が多いと思う。