トランプ氏が掲げる政策 金融市場・経済への影響は

指名受諾演説でトランプ氏は、「インフレを終わらせる」「最大規模の減税を行う」「EVへの“強制移行”を終わらせる」「世界の工場をアメリカに戻す」などと発言した。

――最後の発言など、トランプ氏の頭の中は1980年代で止まってるような感じがする。

早稲田大学ビジネススクール教授 入山章栄:
私もほぼ確実だと思うが、もし大統領になったらトランプ氏は2期目。大統領1期目の時は2期目の再選を意識するので、国全体を見たらマイルドな政策をやっていくと思うが、2期目だと次がないので、本当に自分がやりたいことをやる可能性がある。

――トランプ氏は、インフレを終わらせると言いながら、望んでることは、株高であり、金利安であり、ドル安。これは本当に実現するのか。

早稲田大学ビジネススクール教授 入山章栄:
前回と今回では、全く置かれている状況が違う。前回は今のようなインフレではなかった。アメリカの経済の実態は、長い間のインフレとそれによる高金利、そして消費も含めて少し弱含み。だから前回と同じようなことをやることによる副作用、マイナス効果というリスクも結構あると思う。それが怖いところ。

――長期金利が上がってくると、円高ドル安と逆の方向だ。

さらに、共和党が何を言っているのか改めて見てみると…

――トランプ氏の政策を反映した政策綱領になっているが、外国からの輸入品に一律10%の関税や半導体でいえばアメリカ独自でやるとか、産業構造にどんな影響を与えてくるか?

早稲田大学ビジネススクール教授 入山章栄:
トランプ氏は、とりあえずバーンと打ち上げる交渉術。相手を驚かせて、そこからいろいろ譲歩を引き出して落としどころを見つけるというやり方。本当に一律10%関税というとんでもないことをやるかどうかは分からない。交渉術の一環だと見ることもできる。ただ2期目なので本当にやってしまう可能性もあり、本当に読めない。もちろんこれが起きるのであれば当然ものすごい影響だ。アメリカ国内にもまたインフレ懸念を呼ぶ可能性もある。

――再エネ、GXなどもなかなか厳しくなるか。

早稲田大学ビジネススクール教授 入山章栄:
この辺りは当面遠のくという印象はあるので、もし当選した場合、4年間は世界中かなり我慢というか、苦難の時代になると思う。

またトランプ氏がEV政策を全面的に見直すと言っている中、トランプ・トレードに走った人がいる。起業家のイーロン・マスク氏だ。トランプ氏を全面的に支持するとXに投稿し、トランプ氏について「アメリカでこのように屈強な候補者は、セオドア・ルーズベルト以来だ」とも書き込んだ。またトランプ氏を支持する政治団体に毎月4500万ドル、約71億円の献金を計画していると、ウォール・ストリート・ジャーナルが報じている。

――政治的なタイミングで打ち出したということか。

早稲田大学ビジネススクール教授 入山章栄:
間違いないと思う。最近テスラの本社を全部テキサスの方に移管するような話もある。非常に保守層の強いところに移すみたいな。そういうところも含めてイーロン・マスク氏自体は元々かなりトランプ氏を支持しているところがあるが、よりそれを表面に出すようになった。一方でトランプ氏はEV促進策を止める見直しを掲げている。かなり駆け引きに入っていき、おそらく海外からのEVの輸入に大きな関税をかけるみたいな落としどころになるのでは。

――バッテリーの生産など、いろんな意味でEVの生産には影響が出てくるか。

早稲田大学ビジネススクール教授 入山章栄:
間違いなく出てくると思う。

(BS-TBS『Bizスクエア』 7月20日放送より)